第17話『幽霊同盟』

脚本/伊上勝 演出/田宮武
夜、とある港の大型ヨット内で、10人くらいの人間が集まり秘密の取引をしていた。ガイコツの仮面を被ったスカール(悪魔城の時とは別人らしい)は、幽霊同盟が開発した最新兵器「音波砲」のプレゼンをしていた。ガイコツの仮面の上から器用にハマキを吸っている。「すごい、まったくすごい兵器だ!」「これがあれば世界一の大金持ちだ!」「ここに小型の音波砲があります、さっそく値をつけていただきましょう。」というわけでさっそくセリが始まる。「10万ドル!」「15万ドル!」「じゃわしは30万ドル!」・・・ナレーター「死の商人、それは戦争の裏にあって兵器を売買し金儲けを狙っている連中である。人の命を売買の対象にしているがゆえに、彼らは死の商人と呼ばれているのだ。金儲けのためには国と国との平和を乱し、戦争を計画する、まるで血に餓えたハイエナのような連中なのである。」・・・瓦礫の山の上で勝ち誇るスカールの図。まさに『ロード オブ ウォー』!ほんとにこれが子供向けアニメか?
「500万ドル!」ええ〜?!一同沈黙。「ふふふ、では小型音波砲の設計図は500万ドルでストロング氏にお渡しします。といいたいところだが・・・あなたに渡すわけにはいかん!」ストロング氏に音波砲を向けるスカール。「な、なぜだ?」「国際連合秘密諜報部員またの名をロッド・スタイガー!ご苦労だったよ。」「くそ、俺の正体を!」やおら銃を構えようとするが、音波砲の方が早く、スタイガー氏は一瞬で粉々に。恐ろしいことだ。「ふふふ、これで音波砲の人体実験も出来たし一石二鳥というわけだ。」スカール、音波砲をクルクル回すと、その回転が自動車のタイヤにオーバーラップ。実に映画的な導入部!ちなみに67年『夜の大捜査線』で、ロッド・スタイガーがアカデミー主演男優賞受賞。
ギルモア研究所にて009は国連情報部長(そんな部署があるのか)に会う。部長「戦争を食い物にして私腹を肥やしている死の商人の存在は君も知っていると思う。」009「ええ、人間として許せない連中ですね。」彼らに対する罵倒は留まるところを知らない。
部長によるとその死の商人どもに武器を次々と売りつける幽霊(ゴースト)同盟なる組織があり、それをつぶさないと兵器の拡散は止められない、そこで009たちに組織壊滅のためにひと肌脱いでほしいとのこと。「ぜひナイン君のお力を借りたい。」ナイン君か。
しかし同盟はこれをすでに察知し、ヘリにてギルモア研究所を音波砲で一瞬のうちに撃破。すごい威力だ。
ヘリを尾行した009は例のヨットに行き着く。そしてそのヨットの持ち主がヨーロッパで指折りの財閥、イクラ・デモアール氏の所有であることを知る。彼は平和主義者、慈善家として知られていた。とても死の商人とは結びつかないが。
なんとかデモアール氏に会う009たちだが、そこで驚くべき話を聞く。幽霊同盟の首領スカールはデモアール氏の双子の兄だと言う。兄は発明家だったが、実験中の事故によって顔が醜く変形する。この顔がマジで怖い。身も心も捻じ曲がった兄は、世界を混乱に陥れるために武器商人に堕したのだという。そして息子のジャンを拉致し、自分を隠れ蓑にして商売をし続けていたのだと言う。デモアール氏に同情した009たちはさっそくジャン救出のために幽霊同盟の本拠に乗り込むが・・・さらに意外などんでん返しがあるのだった。
最初見たときは結構馬鹿にしていたのだが、こうやって見ると良く出来た話だと思う。人間は外見と一致しないもの、皆仮面を被っているというテーマは石の森マンガではよく出てくるものである。真相は『変身忍者嵐』のラストシーンを連想させる。
14話と同じくここでも世界征服の理由は顔だ。「貴様はいつも日の当たる場所にいた。それに引き換え、この俺は常に人目に触れぬ日陰の身。この苦しさが貴様なんかに分かってたまるか!俺は貴様を含めてすべての人間が憎い!」あの顔で言うと説得力があります。
第9話から17話までの予告編