第13話『悪魔城の秘密』

脚本/伊上勝 演出/宮崎一哉
原作「地底帝国ヨミ編」の登場人物を使って、全然別のストーリーにしてしまった作品。
冒頭、エッフェル塔自由の女神、ロンドン橋、ピラミッドとスフィンクス、日本の国会議事堂が次々と無造作に破壊される。それぞれがものすごく適当な絵で笑える。国連は破壊活動について審議するため各国代表を招集した。先の名所と打って変わって国連本部の絵は精緻に描かれている。やはり当時の日本の国連至上主義が伺える。すると会議室の巨大スクリーンに強制的に画像が映る。原作で言うバン・ボグートである。「私はキング男爵である、自由の女神凱旋門レーニン廟などなどを破壊したのは私のささやかなデモンストレーションに過ぎない。わははは。」破壊したものが微妙に違うのは、製作時の打ち合わせに時間が無かったからだろうか?
キングの目的はずばり世界征服である。「私は各国の首都の上空にすでに軍事衛星を飛ばしてある。つまり地球上のいかなる地点をも、1ミリの狂いも無く攻撃できるのだ。残された道はただ一つ、私に無条件に降伏することのみだ!」和服の日本人、ソンブレロをかぶったメキシコ人、ターバンを巻いたアラブ人など分かりやすい代表たち。未だに誤解している人がいるが静止衛星というのは赤道上でしか機能しません。「反射衛星砲」みたいなのだろうか?
今回は004がメインである。004は事件があると「こいつは面白くなりそうだぜ!」とはしゃぐ上に戦いを明らかに楽しんでいる軽い性格で、ニヒルな側面は微塵もない。レマン湖畔でトラック輸送の仕事をしていた004は山道でフラフラしている男に遭遇する。場違いなタキシード姿のその男は国連の秘密諜報部員(そんなのがいるのか)だった。男はマイクロフィルムを004に託して絶命する。「ジュネーブのカメオホテルへ行け・・・」
で、ここからスイスを舞台にマイクロフィルム争奪戦が展開するという、もう完全に007(ボンドの方)の世界。敵の刺客スカールと009との戦いは魔人像内の戦いのコピー(スカルはちゃんと両腕が針となって伸びる)、004は磔になる、など「ヨミ編」のモチーフを散りばめている。またジュネーブの秘密基地は、原作のプロローグで武器商人が集まる古城からきているのだろう。
何も考えないで楽しめる一遍。しかしあのシリアスな「ヨミ編」をこんな他愛の無い話に使っていいのだろうかという疑問はある。
ラストはマッターホーンの見える山で004一行がスキーを楽しんで終わり。