『サイボーグエース』

映画ならばDVD、衛星放送、マンガならば復刻版の出版など、その手のマニアならば堪えられない世の中になってきている。なにしろ『恐怖畸形人間』すらその気になれば観られるのだから、もはや観られないのは『ノストラダムスの大予言』と『ジャングル黒ベエ』くらいではないか。だが、まだまだ世の中には完全に忘れられてしまった作品というものがたくさんあるのである。
というわけで私が読んだ当初から頭から離れないマンガ『サイボーグエース』を紹介します。え、『ウルトラマンエース』?『サイボーグGちゃん』?違います。とにかく同世代の誰もしらないんだこれが。71年の少年サンデーに連載されていたのですが、同時期、楳図かずおの『アゲイン』とか『男ドあほう甲子園』などが連載されていわばサンデーの黄金時代だったので、多分忘れているか、読み飛ばしていたのであろう。実際人気が無かったようで、半年くらいで打ち切りになりました。

検索してみると、奇特な方がいらっしゃって単行本の表紙が掲載されてました。正直この主人公のデザインはかっこいいと思っていた。そういう人は非常に少なかったようです・・・
http://pub.ne.jp/kaicho/?cat_id=24993

今回調べてみて作画の北野英明氏は虫プロのアニメーターだったということを初めて知った。アニメ『どろろ』に作画監督として表記されています。因みに原作の「ジャック・ラカン」という人は調べてもまったく正体が分かりませんでした。
http://www.youtube.com/watch?v=07cyiNcvMYY

ジャングル大帝』『どろろ』『明日のジョー』の作画監督を遂行した超エリートです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E9%87%8E%E8%8B%B1%E6%98%8E

オークションなどで1冊5000円くらいで購入できるようなのですが、そこまでマニアではないのでここで当時読んだ記憶だけをたよりに内容を解説します。そのため相当な記憶違いといい加減な脚色があると思うので、より詳しい方は訂正補足お願いします。
オープニング。世界は荒廃していた。プラズマ星人が侵略してきたからである。荒野にて少年ケンとゴローが敵に追われていた。なぜこうなったのか、ケンの回想で発端が綴られる。ケンの住む村の田んぼに妙な「鉄板」が捨てられていて、それに触ったものは人が変わってしまう。どうもその鉄板らしきものにウィルスらしきものが付いていて、それに村人が次々と感染していった、ということだろうか?ジャック・フィニィの『盗まれた街』形式で人びとは謎の宇宙生命に乗っ取られる。で、ケンたちは命からがら逃げ出したわけです。その後、人間がセミの脱皮のごとく背中からバリバリと割れて、プラズマ星人がおぞましい姿を現すのであった。ここまで書いて気付いたのだが、このマンガが印象深いのは「グロい」からなのだった。
ここで回想終わって、ケンたちは荒野でプラズマ星人に追い詰められる。その時!地平線の向こうから(ホントにそんな感じだった)ドドドと砂塵とともにすごい速さで駆けて来た者がいた。「私はサイボーグエース!」と自分で名乗って、5,6人の敵をあっという間に退治する。この時の武器が「V光線」と言って、指をVサインの形にすると、人差し指と中指の間から強力な光線が発せられるのである。普通光線というと指先からとか発想するのだが、これは指間からなんだよな・・・はっきり言ってダサいというか絵柄としてどうなのか・・・この辺が受けない理由なのではないかと。しかし光線は強力で星人はズブズブ溶けていくのであった(これまたグロい)。ここで星人は熱に弱いということが提示される。こうしてサイボーグエースと少年との道中が始まるのだが、詳細は覚えてません。

2話目。星人の次の計画は食人植物を操って人間を掃討するというもの。この植物というのが、見た目はただの枯れ木っぽいのだが枝を伸ばし人間にドスドスと突き刺して体液を吸い取るのですな。『ジョジョの奇妙な冒険』のワムウがナチスにやったのと同じようなものです。しかも結構大規模で、都市を丸ごと襲ったりします。一般市民が次々と植物の餌食となり、逃げ惑う人びとで大パニック。エース一行が現場に着くと見よ!赤ん坊が路上に置き去りになっているではないか。迫る食人植物、泣く赤ちゃん、どうするエース!というわけでエースはダっと駆けると思いきや、急に立ち止まって何やら側頭部に手を当てているのであった。「どうしたんだエース!」とケンが叫ぶところで続く。ここまで読んで、なるほど、次回はエースの新兵器が出てきて植物をやっつけるのだなとワクワクして次週を待ったわけです。で、次号を取って見ると・・・
(つづく)