第20話『果てしなき逃亡』

脚本/小沢洋 監督/勝間田具治
内政干渉シリーズ第三弾。今回の標的は、どう見ても南アフリカ共和国
アフリカの大草原、いかにもなアフリカ音楽、走るキリン、サイ、シマウマと分かりやすい図である。その草原をジープに乗った9378の4人が行く。運転しているのは003、008は双眼鏡を構え、後の2人はライフルを構えている。
回想。008の元に悲痛な知らせが、「若酋長様、留守中にあんたのご家族が・・・」家に駆けつけると、愛する家族の無残な死体が!「おっとう!おっかあ!あ、妹まで!」「人食いライオンの仕業ですだ。」実はこのライオンのために数百人の犠牲者がでているのだ。復讐に燃える008。このエピソードは原作だと「黄金のライオン」のものなのだけど、このアニメではあのライオンをいい奴にしてしまったので、こっちの方にうまいこと嵌めこんだのである。
みごと人食いライオンを討ち取った一行は、帰り道に高い壁の施設を通り過ぎる。
009「008、この建物はなんだい?」008「刑務所さ。」
このランデシアは人種差別で有名な国だからね、政府に反対して黒人解放運動をやると、片っ端から刑務所にぶちこまれるのさ。」003「奴隷はもういないんでしょ?」
「鎖につながれた奴隷はね。しかし今だって黒人にとっては国全体が『格子無き牢獄』さ。」前の大統領は黒人解放を宣言したが、立ちどころに暗殺されてしまった。犯人は捕まっていない。
刑務所内から銃声が聞こえる。ジープを止める009「脱走らしいぞ。行ってみよう。」
監視兵(白人)が集まっている。「おい、女の子を見なかったか?」009「さあ知らないね。」007「そんな女の子までぶち込むのか?!」「なにぃ?お前たち何者だ!」009「ライオン狩りの旅行者さ。」(それもまずいと思う)008「奴隷狩りに来たんじゃねえから安心しな。」「なんだとぉ?やい、クロ、貴様俺たちを何だと思ってるんだ!」「さあね、格好は人間のようだが中身は鬼かな。」「だまれ!さては貴様ら革命派のイヌだな?ぶちこんでやる!」逆に白人連中をボコボコにする009。「さ、行こう。」(それで済むのか)とジープに乗り込むと・・・後部座席に女の子(6,7歳、黒人ではない)が震えて隠れているのだった。
ホテルにて。娘はベティと言う。「君のパパの名前は?」「マルクっていうの。」008「ええ?マルクってあの黒人解放のマルク牧師かい?そりゃ大物だ。」「知ってるのか?008」
「知ってるどころか、マルク牧師と言えば、このランデシアでは黒人たちの神様みたいな人物だぜ。・・・すると君のお母さんは日本人だろ?」「ええ。」マルク牧師は若いころ日本に留学していたのだ。「すると君のお母さんはまだあの刑務所に閉じ込められているんだね?」「ううん・・」「え、じゃあどこにいるんだい?」「死んじゃったの・・・」「ええ!」
回想。深夜、母に起こされるベティ。「さ、ベティ、パパのところへ行くのよ。」鉄格子をはずしてシーツかなんかで作ったロープで外の壁をつたって脱走。しかし走る母子の後ろから無情にも銃弾が浴びせられる。倒れる母。「ベティ・・・私にかまわず、あなただけでもパパのところへ・・・」「ママ!」しかし監視兵が続々やってくるので母を見捨てざるをえなかったのだ。で、夜が明けるまで物置に隠れていて先ほどやっと外へ逃げてきたのだ。
ひどい!こんなことがあっていいのか!今だったらこの娘はPTSDと診断され、心のケアが必要だろう。
しかし009はそのへんはスルーして「すると君のママは人質に取られていたんだね?」と客観的な意見を言う。ベティによると、マルク牧師の潜伏場所はコンゴのレオポルドビルにある教会だそうである。思うに、囚人同士の情報網からマルクの居場所が分かったので脱走を決意したのだろう。
大統領官邸。大統領(白人)「なに、マルク牧師の潜伏場所が分かったと?」部下(白人)「コンゴのレオポルドビル(現キンシャサ)だそうです。」「国外に逃がしたか・・・」「やりますか。」「すぐ手配してもらおう。」
(つづく)