第19話『恐怖の原潜 シースネイク号』つづき

(結末まで記述しています)

シースネイクの後を追う009一行は洞窟の中の秘密基地に到達する。シースネイクの中は無人、誰かが操っているのだ。中を進むと広大な機械だらけの広間に出る。突然電磁バリヤーに囚われる009たち。次々と現れる戦闘員。003「ヘルマンさん危ない!」009「大丈夫だ、その人は敵のスパイなんだ!」ビシっと指摘する009。
動揺するヘルマン「え、どどどうしてそれを!」「今あなたを囲んでいる戦闘員があなたを襲わないのが何よりの証拠・・・。それに海中であの怪獣が現れた時、あなたは襲ってこないといった、それはあなたの味方がリモコンで動かしていたからだ。・・・ヘルマンさん!あなたのボスはよほど冷酷で残忍な人らしいですね?」

「それは違う。残忍だの冷酷だのという感情はくだらぬ人間だけの持ち物だ。全ては正確に計算されたデータによってのみ決定されねばならない。」突然壁が開き、巨大な機械・・・コンピュータが現れる。「ボス、あんまりだ、なぜ攻撃したんです。」「理由は簡単だ、そうした方がいいというデータが出たからだ。」「お前はこの作戦においてサイボーグを近づけさせないという任務を果たせなかった。本来なら他の仲間と同じ運命にしてやってもよかったんだぞ。やはり人間は愚かだな。」蔑んだ口調のコンピュータ。どうやら恐竜も戦闘員、その他のロボットもこのコンピュータが製造したようだ。
「そういうお前だって人間に作られたんじゃないか!」と007。「その通り。5年前、ヨーロッパ軍事同盟が立てたオメガ計画を覚えているか?その時集まった科学者たちは自分たちで世界が征服できると信じ、この島に正確無比なコンピュータ、つまり私を主体とする機械の島を作ったのだ。そして愚かにもその機械に征服されてしまったのだ。君たちはその無様な成れの果てを見てきたはずだ。」離れの部屋には白骨が山積み。「335時間15分でこの島の基地は機械のものになり、人間どもは消えた、このヘルマンを残して。」「なぜ?」「そういうデータが出たからだ。第一にこの男だけが機械を信じていた。第二に私の計画の実行に役に立つ。第三にスパイとしての利用価値だ。」力なく跪くヘルマン。「ヘルマンさん、そんなにまでされて機械の奴隷になって・・・。」もはや怒りを通り越して哀れみさえ感じる。
ヘルマン「だめだ!もう遅いんだ・・・」「その通り、彼の腕時計を見るがいい。」腕時計から電流が流れ激痛でのけぞるヘルマン。「もっと電波を強くすればヘルマンは死ぬ。これは私の指令を受ける通信機であり、また背いたときに処刑するための道具でもある。もちろん勝手に外すことはできない。」たかがブリキのバケモノにここまでいいようにされるとは、人間としてこれほどの屈辱はないだろう。
「ところでサイボーグ諸君の処置についてだが、今計算したところ、殺すよりヘルマンと同じく奴隷として使った方が25%の利益があるというデータが出た。」ヘルマンの前に数個の腕時計を差し出すコンピュータ。「さあヘルマン、君の新しい仲間に嵌めてやりたまえ。」「サイボーグ諸君、少しでも動いたらロボット戦闘員たちがレーザー銃の引き金を引く、人間の動きよりはるかに速く。」万事休すか。「ヘルマン、早くやりたまえ。時間の浪費は最大の無駄だ。」
ヘルマン、時計をつかむとええい!と床に叩きつける。「ヘルマン、気でも狂ったか?」
その逆だあ!!」ロボットの銃を奪うとコンピュータに突撃しズダダダと発砲する。爆発する機械。しかし強力な電撃がヘルマンを見舞う。うぎゃあっと倒れるヘルマン。
この機会に乗じて009たちはロボット戦闘員を掃討、ヘルマンに駆け寄る。「うう、早く脱出しろ、あと15分でこの島は爆発する・・・。君のおかげで人間として・・・死ねる・・・」息絶えるヘルマン。
間一髪で島は爆発する。007「やれやれ無事でよかったねえ。」
「そう・・・一人の勇敢な人間のおかげでね。」夕陽を見つめながら呟く009であった。

ちなみに『2001年宇宙の旅』公開が68年4月、この回の放送が8月。芹川さんはヘルマン・ヘッセのファンだそうです。