第19話『恐怖の原潜 シースネイク号』

脚本/芹川有吾 演出/新田義方
芹川有吾が脚本に回っている作品。潜水艦ものに駄作なしと言われているが、サスペンス調のプロットと深いテーマで最後まで引っ張ります。
ギルモア研究所では来日してきた008も交えて楽しく会食をしていた。003がメイドの格好をして皆をもてなす。そこにギルモア博士が血相を変えて入ってきた。「002からの緊急連絡じゃ。アメリカの原子力潜水艦シースネイク号が沈没したそうじゃ!」このところ世界中の船舶、軍艦の沈没が頻発していた。「002はすぐ応援に来てほしいと言ってきてるんじゃ。」ここでラジャー!と立ち上がるサイボーグ戦士たち・・・ではなかった。何だ!この不穏な空気は!
006(中国)「そんなの作る方が間違いの元アルヨ。」
007(イギリス)「ちぇ、勝手に沈んどいて、自分たちで引き上げりゃいいじゃん。」
003(フランス)「あたしたちには関係ないわ!
ひどい・・・それでも平和の戦士か?
シースネイク号には最新式ホーミング魚雷、さらに特殊水爆ミサイルを搭載していた。アメリカは何としても確保したい。また水爆がテロリストの手に渡ったら大変だ。009(日本)はアメリカだけの問題ではなく世界平和のためと、渋るみんなを言いくるめるのであった。
太平洋上にものすごい数の戦艦、駆逐艦、空母がひしめいている。やあ良く来てくれたなあと握手を求める002の手を007は怒りのあまり払いのける。002の立場って「ここがヘンだよ日本人」に出席してるアメリカ人みたいなもんだよなあ。正に四面楚歌。心を許せるのは009と004(ドイツ)くらいか?
さっそくドルフィン号を出動させることにするが、アメリカ側は艦隊参謀のヘルマン中佐の同乗を要求する。あっさり同意して932678のメンバーとヘルマン中佐で潜行を開始する。
「海底に突き出ている山があり、シースネイクはその山の上に降りているはずです。」「間違いありませんね?」「絶対。人間が調べたんじゃない。機械が計算して出したデータですから。」007(この先生、人間より機械を尊敬しているみたいだ。)
ほどなくして山の頂に着いたが、原潜は見当たらない。「そそんなはずはない!」
003「・・・それに私の目にも見えないわ。」「人間の目なんか信用できるか!」
ここで海上から連絡が入る。2時間ほど前に駆逐艦が南へ遠ざかるスクリュー音を聴いたと言う。
009「それだ、間違いない。」ヘルマン「なぜだ?」「なぜって・・・僕のカンですよ。」「馬鹿らしい!カンだなんて。」南へ進路変更すると「待て!やめた方がいい、危険だ!」009「危険は承知です。無人の艦がさらわれていこうとしているんだ、何が現れるか分からない。それに水爆は放って置けませんからね。そうでしょう?」「うーむ・・・」
南へ行くとそこには恐竜が待ち受けていた。
ヘルマン「待て、襲ってきたりはしない!」009「なぜ分かるんです?」「い、いやカンさ・・・」「冗談じゃないアルよ、キバむいて飛び掛ってくるアルよ。」恐竜は98の連携プレーで撃破。
戻ると今度はミサイル鮫の集団が襲う。これも全員で撃破。ヘルマンこれを見て一人でうろたえる。「ひどい、私がいるのに・・・」
今度は無数の爆弾コバンザメが船体にへばりつく。これまた全員で外しにかかる。見かねてヘルマンも潜水服を着て参加。しかしコバンザメは爆発し、ヘルマンは危ういところで009に助けられる。しかしドルフィン号に穴が開く。008が修理に入る。当初はあれほどゴネたサイボーグたちだが、いざ本番となれば一部の隙のないキビキビとした活躍だ。
ヘルマン「すまん、わたしのミスだ。」009「なあにすぐ船は直ります。」
「あの時、君はこの船を犠牲にして私を助けたね。なぜだね。」
「決まっているじゃありませんか。機械より人間の方が尊い。」突然絵が劇画調になる。
「しかし機械は人間より正確で役に立つ!」
ドイツ表現主義のような陰影のコントラストを強調した不安定な構図になる。
「あなたは変な考えをお持ちのようですね、でもそれは間違っている。この世界で一番大切なものは人間の愛だ、心だ。機械にはそれがない。そうでしょう、ヘルマン中佐。」黙々と動いている艦内の機械。
「009・・・私の信念を惑わすようなことを言ってくれるな・・・」
直ってさあ出航しようとしたとき、近くにシースネイクがいることを003が察知する。愕然とするヘルマン。シースネイクは魚雷を発射した!「全速後退、面舵!」逃げても執拗に追いかけてくる魚雷。
ダメだ!アメリカが世界に誇るホーミング魚雷から逃れられるわけがないぃー!」頭を抱えるヘルマン。しかし008が魚雷をあっさり撃破。「・・・あの完全な機械が、人間の力に負けた・・・」ガクガクと震えるヘルマン。とにかく挙動不審だ。
(つづく)