第一話『恐怖の怪人島』

脚本/伊上 勝   演出/田宮 武
考えてみると、TVアニメがスタートした時、漫画の方では、あの伝説的なラストを持った「地底帝国ヨミ編」は終わっていた。第一話は人気に押されて再スタートした後の話「怪人島」がベースというのは、今となっては違和感を感じる。それとも原作の009の出自を暗示させるために選んだのだろうか?
刑務所が怪物に襲われ3人の囚人が騒ぎに乗じて脱走する。このときの絵がなんとも・・・赤塚不二夫か?と言うくらいギャグ調で、これでいいのか?と思わせる。みんな2〜3頭身でかなりデフォルメされた人間なのだ。
大きな屋敷に忍び込んだ3人はたちまち化け物に襲われる。屋敷は二人の超あやしげな科学者であった。なぜなら一人はセ○シで、もう一人は顔が醜い。これはもうあやしいとしか言いようがない。囚人の内の一人が辛くも逃亡し。セ○シの科学者の丸い背中がパカっと開くと、そこから無数の人造蜂が飛び出し、囚人を追う。蜂に刺された囚人は正気を失い、キ○ガイのようになる。彼が道路でフラフラしているところで、やっと009が登場する。009は003とオープンカーでドライブの途中であった。
ギルモア博士の研究所は海を臨む断崖にあり、かなり大規模である。このアニメではサイボーグたちはブラックゴーストに改造されたという設定ではない。では誰が改造したのかという具体的なところは語られない。普通に考えてギルモア博士が9人全員を改造したということであろう。技術的、人権的に考えてどうかと思うが、このアニメにサイボーグの悲哀はない。彼らは大体が明朗闊達で、ギルモア博士(原作ではそうでもないが、家長と言った雰囲気で威厳のある人物になっている)の指示によって動き、世界のさまざまな事件に介入する。ギルモア博士の私的組織なのか、さらに大きな組織(普通に考えて国連か)の命を受けているのか、よく分からない。一番近いのは『サンダーバード』だろうか。
日本に常駐しているのは、009、003、001、006、007である。彼らは普段は私服である。006は中華飯店の店長なので調理服を着ており、007はボーイの格好である。先ほど赤塚不二夫を出したが、007は時々チビ太のように見えることがある。003のファッションはなかなかセンスがいい。この時はボデイラインを強調した黒のセーター(7分袖)に黒いパンツで、いかにもヨーロッパ風である(詳しくないけど)。正直言ってサンライズ版009の003よりもこちらの方が大人の女性を感じさせる。後のメンバーは必要に応じて各国から召集する。登場の回数はまあ、人気投票順であろうか。しかもマフラーは009のみ着用、しかも制服が一人だけ白く、あからさまな差別化が図られている。
この後、科学者の陰謀を知った009たちが屋敷の乗り込み、巨大カモメや巨大カニと戦うことになるのだが、よく考えると結構原作に忠実な展開である。最初の方で絵が下手と言ったが正確ではない。時々びっくりするほど動きがよくなる。人物が面奥から前へ走ってくる(またはその逆)というのもよく出てくる。大胆な構図(今回で言うと魚眼レンズ風の構図とか)、陰影をつけて立体感を出す、など実はよく工夫している。そう感心していると次の瞬間とんでもない手抜き絵になったりする。後半で科学者(後にドクトルドラキューラ、ドクトルセムーシという名前が判明)がキノコ型の乗り物で逃亡しようとする。原作ではこの後「中東編」に続く。