第2話『Xの挑戦』

脚本/辻 真先 演出/芹川有吾
第2話はいきなり見違えるように気合の入った作品。第一話で「彼らにサイボーグの悲哀はない」と書いたが、このアニメではそうした影の部分は相手側が請け負う、というコンセプトが明らかになる。
サイボーグXと名乗る飛行艇に乗った男がギルモア研究所にいきなり乱入し、散々暴れまわる。彼はギルモアのライバル、オメガ博士の作ったサイボーグであった。どちらのサイボーグが優れているか、勝負しろ!と言うわけである。
この後、アニメ史に残るんじゃないかというシーンがある。夜の都会、列車の陸橋の下で若い女性が墓に花を捧げている(こんなところに墓があるというのもなんだが)。そこに先ほどのXが来る。墓の前に跪いている彼女の後ろに音も無く降りてくる(背景はぼけている)。
「ミッチー」
(振り向く)「誰なの」
(X、飛行艇の中でヘルメットを取る)
「ああ!」(花束を落とす)「マック!」(駆け寄る)
「死んだとばかり思っていたのに・・・生きていたのね。あそこにお墓まで作っていたのよ」
「ありがとよ、こりゃあいい。はっはっは」
「ねえマック・・・どうしてそこから出て来ないの?本当にあなたなの?」
飛行艇のドームが開く)「上半身はな・・・」(X=マック立ち上がる)
「あ!」(ミッチー驚愕)
(列車通過する。轟音)
(ミッチーの顔が列車の光で規則的に照らされる)
(Xの足が列車の光で規則的に照らされる。機械の足。)
(列車通過し終わる)
「マック・・・」
(マックの体の全貌が分かる)
「分かったかい、僕はこの機械(飛行艇)の一部なんだ。君と楽しくバラを育てていた、あのころの僕ではない。」

列車の光で、ミッチーと機械の足が光った上に立体的に見える。さらに轟音。技術的にどうということはないと思うが、編集の妙技でものすごい効果をあげている。私はこの回をリアルタイムで見ているが、内容(はっきり言って子供には難解)は覚えていなくてもこのシーンだけは覚えていた。

Xが戦闘モードになると、足についている夥しい数のコンセントに飛行艇の方から自動的にコードが延びてきてプラグが接続される。肘の部分に直接レバーが付いており、それを操作する。『攻殻機動隊』や『スチームボーイ』などに出てくる人間が機械に接続されるという設定のはしりである。
009らにかくまわれたミッチーはX=マックがかつての婚約者であったと語る。しかし1年前、交通事故で死んだはずだった。しかしオメガ博士によりサイボーグとして蘇ったのである。悪として蘇ったマックに動揺しつつも、彼を愛するがゆえに逆に009を撃とうとする。しかし悩んだ末、マックを倒してくださいと、毅然として言う。
一方、機械の体ゆえの諦めとプライドからオメガ博士に服従しているマックは、ミッチーが009側についたと知って、嘆き天を仰ぐ。断崖にて「009!僕はこのバラの花びらに賭けて誓う!貴様を倒すと。博士の命令ではなく僕自身の意志で貴様の息の根を止める!」
ついにXと009の決戦が開始され、エキサイティングな空中戦が展開されるが、それが新たな悲劇を生む。本当は009とXとの相違はサイボーグという点ではあまりないはずである。結局、心の弱さが招いた悲劇という結論だろうか。
それにしても市街地であれだけ暴れまわって、警察も市民も出てこないというのはどうなのか。公園でマシンガン乱射とか物騒な話ではある。とはいえ人間もメカもかなり動きがよく、背景も丁寧に描きこまれている。人間は踊るように動く。やはり監督(芹川有吾)でこれほど変わるものか。