第3話『南極の対決』

脚本/辻 真先 演出/芹川有吾
原作の「ノイエナチス編」からアレンジ。派手な冒険活劇である。冒頭のカーレースの画質がちょっと違うが、これは劇場映画版からの抜粋である。このアニメはこの手法をよく使う。
レーサーである009はこのレースで事故に巻き込まれる。009はこの事故を不審がる。一方ギルモア博士は何者かに襲われる。狙いはどうもコズミ博士の発明品らしい。さらにコズミ邸では一人娘の静江(一見子供のようだが年齢不詳)が何者かにさらわれそうになるが009に助けられる。帰りの車の中で彼女は、家庭から父を奪った研究が憎い、と009に語る。その時、上空からプロペラ式VTOL機が!この飛行機が妙にリアルで、私は詳しくないが、モデルがあるのであろう。翼が途中から回転し、プロペラが上になり、翼が地面に対して垂直になると、そのまま着陸できる。敵が撃った音波砲で009体が動かなくなる。これがコズミ博士の発明、あらゆる機械を狂わすマッドマシーンなのである。その間、まんまと静江がさらわれてしまう。敵はさらに大きな飛行機に乗り換える。貨物輸送機だろうか?車輪はタイヤではなくキャタピラである。009尾翼につかまってそのまま飛んでいく。行き先は南極!003仲間に援軍を要請する。3話目にして全員が揃うことになる。ギルモア博士の一行も私設大型潜水艇ドルフィン号で南極へ向かう。
南極ではブラッククロスというナチス式敬礼をする一団が大規模な秘密基地を作っていた。そういえば007にも南極が舞台になったことはないな。ここの戦闘員がでかいペンギンの着ぐるみを着ているのが笑える。案の定コズミ博士はここに監禁されており、マッドマシーンの秘密を聞き出すために娘をさらってきたのである。
この後、9人のサイボーグとブラッククロスの陸海空軍との派手な大立ち回りがある。それぞれのサイボーグに見せ場があり、004は「あらよ!」と言いながら四肢からミサイルを発射する明るい性格になっている。
この回の特徴として、前回がSF的なメカだったのに対して、飛行機、戦車、自動車などのメカが異様に現実的だということだ。
なぜマッドマシーンを発明したのかと問われてコズミ博士は語る。
「若いころ、私はロンドンにいた。若くて美しい妻のシンシアと幸せな毎日を送っていた。ところが第二次世界大戦が始まり、ロンドンはV1号ロケットの攻撃目標となった。シンシアは片足を失い、顔は火傷で醜く引きつってしまった。そして彼女は静江を生むとまもなく、自らの命を絶ってしまった。娘に醜い自分の姿を見せたくなかったのだ・・・。だから、私は戦闘用機械の全ての機能を狂わせるマッドマシーンを作って、世界中から戦争をなくしたいと思ったのだよ!」
まったくむごい、悲しい話である。こんな仕打ちを受ければ誰しもマッドマシーンを作りたくもなるだろう。
そこでギルモア博士が言う。「戦争を防ぐためだと言って恐ろしい原水爆を作ることより、マッドマシーンの方がよっぽどいい!」・・・いやそれはちょっと違うと思うぞ。すでに悪用されてるし。
大体この話のキモは、ここで静江が「お父様も機械を憎んでいたのね」と感激してたら009(彼らも半分機械だ)と目が合ってすごく気まずい雰囲気となって終わり、という救いのなさなのだが。すげー強引な落ちだ。
私はこのアニメを観て、オーロラというのは、カーテン状のものが静止して空に垂れ下がっているものだと長い間信じ込んでいた。