『呪いの壺』の特撮は永遠です

DVD 怪奇大作戦 Vol.6

DVD 怪奇大作戦 Vol.6

は、やはり優れた作品だった。実相時監督の70年代前後のTVドラマはほとんど神がかっていた。晩年になるとファンタジー色とおちゃらけが多くなり老いを感じさせるが、この頃の陰鬱さとシャープさを兼ね備えた映像は特筆に価する。京都ロケで制約も多いだろうに、次々と斬新なカメラワークを繰り出し、ワンカットとて無駄なカットがない。まさにプロフェッショナルな仕事である。
薄暗い日本家屋、漆喰の剥がれ落ちた土塀、蒸気機関車・・・この作品自体が失われた日本の映像記録だとも言える。
ただ彼の手法は30〜60分のTVドラマが限界、という気もする。2時間の映画だと目が慣れてきて飽きてくるのだ。題材にもよるが、いまだに『あさき夢みし』を最後まで見通すことができない。映画で成功したのは『無常』と『帝都物語』くらいじゃないか?そういえば『無常』は特撮に全然縁の無い良心的な評論家、佐藤忠男さんが大絶賛してたが、どういう趣味だったんだろう?
『呪いの壺』は才能に恵まれながら、贋作作りに甘んじ、表舞台に立てない陶芸家の怒りを描いている。その壺を年代物の高級品として金持ちに売りつけるのであるが、誰もそれが贋作と見破れない。それどころか益々価値が上がっていくことに主人公は絶望する。誰も真贋を見極める目を持っていないとしたら、文化の行く末はどうなる・・・?
そうして主人公はこうした見る目のない勝ち組大金持ちを次々と殺していくのであるが、なんか作家のユーザー批判にも受け取れ、実相時&石堂淑朗の暗い情念を思わせる。
2ちゃんの実況版を覗いていたら、最後の炎上シーンでこれ本物なの?と驚愕する人が何人もいて、40年近く経った今でもあの特撮は有効なのだなと感心すること頻りである。