第48話『十秒間の未来』

Joetip2005-12-15

最終回目前にして、これまたものすごい作品が登場。これだけの底力があるのだから、もっとやれたのでは・・・まったく惜しい。
なんと今回は知っている人は知っている、知らない人はまったく知らないSF映画の巨匠、イブ・メルキオール監督(オールシネマ オンラインでは『メルキオー』と表記)の原案、脚本である!メルキオール監督は50〜60年代、B級SF映画を作り続けた。『バンパイアの惑星』『巨大アメーバの惑星』など、彼の作品は、低予算、チャチな特撮でも、確固たるSFマインドがあれば鑑賞に耐えうる映画を作れるということを証明している。特に『原始怪人対未来怪人』(原題『タイムトラベラーズ』)は時間旅行の方法、未来世界の様子、など実にユニークで、特にラストの意外性が印象深い傑作である。
この『十秒間の未来』は『原始怪人対未来怪人』のラストからの着想であろう。

冒頭、『博士の異常な愛情』のファーストシーンのようにB52が飛行している。B52の片翼に小型飛行機がぶら下がっている。超音速機のテスト飛行である。パイロットのジム(デューイ・マーチン)がボタンを押すと、機は勢いよくB52から離れていった。これはなにかの記録映画からの映像だと思うが、迫力がある。下では妻のリンダ(メアリー・マーフィー)が自動車で機を追っている。だがトラブル発生!機はリンダの自動車の目の前で不時着、自動車は脱輪、二人とも意識を失う。ジムが気がついて機から降りてみると・・・何かが違う・・・静かだった。人も動物も動いていない。鳥が空中で止まってるじゃん!

ジムとリンダ以外、全てが静止していた。我々は死んだのか・・・?基地で戻ってみると、やはり基地の人間はみな『江分利満氏の優雅な生活』の1シーンか、バルタン星人に冷凍光線を浴びせられたかのように静止していた。しかしジムは基地の時計を観察し、こう推測した。墜落のショックで二人は十秒先の世界に飛び出してしまったのだ。そして時間の裂け目にはまってしまった。二人と世界は別の時間軸で動いている・・・目の前に見慣れた世界が広がっているにも関わらず、何一つ動かせず、声も届かない。絶対的な孤独であった。しかし時計をよく見ると、ゆっくり動いていた。人間もゆっくりだが生きて動いている。

これってスティーブン・キングの『ランゴリアーズ』に似ていると思うが気のせいか。あとで謎の怪人も出てくるんだが。
とりあえずどういう現象かは把握したが、基地でとんでもない光景を発見する。基地の託児所にあずけていた娘が三輪車で遊んでいる。娘の死角には軍用トラックがある。そのトラックはハンドブレーキを引いていない!メーターは5キロくらいを示している。つまりあと数秒で無人のトラックは娘を轢いてしまうだろう・・・。時間軸が違うので、この世界のものは何一つ動かせない。無情にもズンズン進んでいくトラック。彼らは愛する娘を助けられるのか・・・、元の世界に戻れるのか?

筒井康隆の初期の作品『お助け』に似ているが、これは筒井先生の方が先。最近では平成アニメ版『サイボーグ009』にも似たような話があったが。
やはり見ものは止まっている表現方法だろう。今だったら『マトリックス』の「マシンガン撮影」で撮れるが、この作品は写真と止まってる演技のミックスで何とか見せる。子供にすら止め演技を要求するとは正に鬼(それほどでもないか)。女の子、ブルブル震えてます。写真の人間と動いている主人公が同じフレームに納まっているシーンがあるが、方法は良く分からない。ひょっとしたら等身大の人の写真を用意したのかも知れない。

メアリー・マーフィーの経歴は、ルドルフ・マテ(『地球最後の日』)、スタンリー・クレイマーノーマン・ジュイソンサム・ペキンパーと、やたら監督に恵まれている。