『占星術殺人事件』(つづき)

話の中盤で、御手洗がコナン・ドイルのホームズ批判をやり始める。これが面白くて笑った。ホームズの推理方法は私もおかしいんじゃないか?と思っていたからだ。ホームズの洞察力の例としてよく出てくる「使ったパイプでその人物を推理する」ことを御手洗が批判する。

・・・それから吸い口からみてパイプの右側が焦げているから持ち主は左ききだって言ってた、それもマッチじゃなく毎日ランプで火をつける癖がある、いつも左手でパイプを持ってランプの炎に近づけるから右側が焦げるんだって。
そんな大事なパイプの右側を毎度焦がすようなことを持ち主がするとして、僕らは右ききだけど、もしパイプをやるとしたらどっちの手で持つだろう?むしろ左手で持ちそうだ。右手は字を書いたり、しょっちゅう何か作業をするからね。パイプなんてのは作業しながらも吸ってるもんだ。するとこれは火をつける時も左手で常にランプに近づける人も相当数いそうだぜ?

パイプの右側が焦げてるから左ききとか、靴底の左側が減ってるからどうとか、そう簡単に断定できないとは思う。字を書くときは右手、パイプを吸うときは左手、と縁起かつぎで堅い信念で遂行している人もいるかもしれん。まあ人それぞれだと思う。

あ、そうそう、あの人は変装の名人だったけ?白髪のかつらと眉をつけて日傘をさしてさ、御婆さんに変装してよく街中を歩いたんだろう?ホームズの身長をしってるかい?6フィ−トと少しだぜ。1メートル90近い婆さんがいて、こいつが男の変装かもしれないと思わない人間がこの世にいるのかしら。

いわゆる「お前みたいな婆あがいるか!」てやつですね。
時代の変遷てのは残酷なもので、100年前だったらすげえ!と賞賛されたものが今では笑いもの・・・いやもちろんコナン・ドイルは偉大ですよ!『ロスト・ワールド』の作者だし。いまでは「妖精写真事件」の方が有名かもしれんが。

中盤の竹腰氏の手記の登場により、事態は急展開だな。つまり女性でも犯行可能ということだ。というか犯人は女性だろ?こんな回りくどいことをしたということは。
後半はベッド・ディデクティブタイプから一転して京都まわり。これがどう見ても観光めぐりで、犯人探しという雰囲気ではない。文庫本で323Pまで読んだ。有力な容疑者もいないし、手がかりらしい手がかりもありませんねえ。