第26話『平和の戦士は死なず』(つづき)

009が気がつくとそこは宇宙空間だった。目の前に人工衛星のようなものが浮かんでいる。頭の中で妙な笑い声が聞こえる。
009はその衛星に降りてみる。簡単に開く入り口。しかし中は、異様な空間が広がっていた。
「あははははは。」笑い声が木霊する。目の前の空間にあの人形が浮かんでいる。「009良く来てくれたね。」「貴様は誰だ!」
人形(声:堀絢子)「誰でもない。私さ。君と私はずーっと前からおなじみじゃないか。」「私は人間のいる所ならどこにでもいる。あるいは君の心の中にも住んでいるかも知れないなあ、あははは、分かるかね?」
「分かるもんか!はっきり言え!」
「かつて私はドイツ人でちょび髭を生やした小柄な男に取り付いたことがある。そいつにユダヤ人を大勢殺させた。あいつはヒトラーとか言っていたな。
「なにい?」
「だが、なんてたって一番楽しめたのは、『エノラ・ゲイ』とかいう爆撃機に取り付いて、広島まで行ったときさ。」
オバQの声で)「あの時はさすがの私も驚いた。これほど人間というものが残酷になれるとは思ってなかったよ。だって、あははは、奴ら原爆のスイッチを押しちゃったんだよ?40万人の非戦闘員、そう、女、子供、生まれたばかりの赤ん坊の上でだよ?」
「へへへ、しかも、そのパイロットが平然としてるんだよ。その理由がまた最高に傑作なんだよ。『大統領が許可したから』『指令官の命令だから』なんだってさ!
あは、あは、あはははは。おかげでその1週間で私の力は千倍も大きくなれたんだよ!。」
「まだ生きていたのか、人間の心に潜む悪、あいつだ、いつかのあいつだ!」
「だから、ずーと前からおなじみだといったじゃないか。あはははは。」
「悪魔め!」スーパーガンを撃つ。人形は破壊される。
「これで私を倒したつもりかい?私は不滅なんだよ。人の心にポッカリ開いた隙間から私は幾らでもやってくる!」後ろに人形がいる。
それでも人形を破壊し続ける009。
「無駄だ!聴け!009。いまさらお前ごときがもがいても遅い!やがてパブリックのバカ共がミサイルを発射する!」「な、なんだって?」「あはははは、あは、あは、あはははは。」
ジョン大統領がTVで声明を出す。大統領の机の上にはあの人形が。
ミサイル指令センターのランプが点灯し始めた。ランプを凝視するネビル。
(つづく)