第15話『悲劇の獣人』(つづき)

テレパシーで脳に直接イメージを叩き込まれる009。2268年、典型的な未来都市。「お前たちはすでに未来に来ている。これが我々が住んでいた町だ。」ミサイルが次々と発射される。「驚くことは無い、憎むべき平和の敵が引き起こした第三次世界大戦だ。」次々ときのこ雲が炸裂する。思わず耳をふさぐ009。そして果てしなく続く廃墟。「当然の結果として放射能は地球に充満し、そしてその洗礼を受けた。生きとし生けるものことごとくだ。すさまじい変化を起こした。」力なくうずくまっている生き残った人々。赤ん坊を抱えている母親もいる。「よく見えるか?これが人間なのだ。そして君たちの子孫なのだ。つまり我々の姿なのだ!」子供たちの一団・・・みな奇形で、腕がタコ足だったり目が一つだったりする。正に『フリークス』、『恐怖畸形人間』の世界。
一方ドルフィン号では、009たちからの音信が途絶えたので003が不安になる。「009ですらやられたらしい。お前が行ってもどうにもならん!」「行かせてください。ジョーのためなら、私はどうなっても・・・(泣)」今までもこういう事態はあったのに、なぜ急に取り乱すのか。不自然だ。
「見ての通りだ。核戦争さえなければ、我々は五体満足な人間として生まれるはずだったのだ。」あまりのことにすっかり意気消沈し言葉を失う009たち。「残念ながら最大の努力はしたが、タイムマシンを作ることは出来なかった。」タコみたいなミュータントが白衣を着て研究している姿が泣かせる。「外には放射能の雨が降り注ぎ、滅亡のときは刻々と迫っている。我々の前にあるのはどの時代に着くか分からないあわれな機械、タイムシップだけだった。しかし我々は賭けをしたのだ!そして君たちの時代に着いたのだ。この時代は幼稚な機械文明だが、なんとか材料を集めてタイムマシンの研究を進めているのだ。」
「それならなぜこんな島でコソコソやらないで、正式に国連へ申し出ないんだ。」と世間知らずの優等生的発言をする009。
ノア、この甘っちょろい発言を「笑わせるな!」と一喝。
色が白い黒いということで争っている君たちだぞ。ところが我々はごらんの通りのバケモノぞろいだ。それでも君たちは人種差別をやめて友達になってくれるというのかい?」
40年経って、『ナイロビの蜂』とか『ホテル・ルワンダ』などを観ると、よくなるどころかもっと悪くなっているようですね。グウの音もでない009。「我々は未来人だ。君たちに哀れみを請うつもりはない。」
そこへリナが現れる。リナはノアの妹で、実は足がない。お出かけの時だけ義足を付けて、家にいるときは円盤みたいなのに乗っている。むごい話である。リナはジャックの恨みから009を殺そうとするのだが、ノアはちょっと待て事実を確かめてからだ、と009の脳波を調べる。最初の印象とは違い、ノアはなかなかの人物のようだった。データを見るノア。「こ、これは!」ジョーについて、重大なことを発見したらしい。
そこへ003が乱入。愛する009を助けるために健気にもスーパーガンを手に暴れまわる。余計なことすんなよ・・・。殺気立つ戦闘員たち。まとまりかけていた事態もまとまらなくなる?リナは顔色一つ変えず、走る003の足を撃つ。その気になれば殺せたのだが足を狙ったのは、足があってしかも美人である彼女への嫉妬である。この辺が大人の演出である。誤解が誤解を産む、やはり現代人とバケモノ、じゃなかった未来人とは分かり合えないのか・・・大人の演出と言えば、この後のラブシーン(?)も当時のアニメとしては珍しかったかもしれない。
こんなアニメを午後7時半から家族揃って夕食を食べながら観ていたのだから、いい時代だったなあ(遠い目)。