第15話『悲劇の獣人』

脚本/辻真先 演出/勝田捻男
これは相当の問題作で、そもそも原作も改変が進み、いまではかなり変わってしまっている。もっとも観た当初の印象よりもゆるい演出だったので、ちとがっかりした。
嵐の夜、張々湖飯店の近くで交通事故があった。007はかけつけるが、乗っていた若い男女はいわくありげにその場所から立ち去っていた。「ジャック、ごめんなさい、あたしが街を見物しようと言ったばっかりに」「いいんだ、リナ。しかし僕はとんでもないことをしてしまった。」「まあ、ジャック、腕が!」男には片腕がなかった。
007が拾った腕は現代の技術では考えられないほど精巧な義手だった。腕はほどなくリナに奪還される。009一行が追いかけると、そこには3人の男が立ちはだかっていた。ジャックは車の中で有無を言わさず処刑される。「リナ・・・一目君に会いたかった・・・」原子破壊銃で一瞬で粉々になるジャック。非情。その後には被爆地に残されているような「影」が残る。その後に腕を持ってリナがやってくる。「リナ、この世界に痕跡を残した者は処刑される、分かっているな?」一応ジャックの処刑を伝えようとする男。この時点でリナは恋人が死んだことを知らず、許してもらえると思っている。
男が言おうとした矢先に009たちが乱入し、戦いが始まる。男が持っている銃を009は払おうとした瞬間、銃が暴発し車が蒸発する。「ジャック〜!」ということでリナはジャックが死んだのは009のせいだと思い込む。もうすでに車の中でジャックは死んでいたのかと思うと、やりきれない話である。
戦っているうちに3人がそれぞれ腕、足、顔が取れてくのでびっくりする009たち。3人の中で一番イケメンの男が実は一つ目のバケモノだったというのは、哀しい心理である。「貴様ら宇宙人だったのか!」「なるほど宇宙人か・・・しかしお前らに見られたのは我々の失敗だ。」「(自分で)処刑準備!」というと3人まとめて自爆する。すごい規律である。法を犯したと判断したら自分で刑罰を科しちゃうんだから、究極の法制度か?いつでも死ぬ覚悟なので、仲間の処刑も躊躇なく行えるのだろう。リナは一人で脱出して帰還する。「ジャックは殺されました・・・。残酷な人間たちに!」
同時期、002はある離れ小島で、奇怪な建造物と宇宙人らしき集団に襲われたと報告する。さっそく島に向かう009一行。そこには円筒形の巨大な塔を発見する。003「009、気をつけてね、相手は人間じゃないのよ。」「大げさだなあ、大丈夫だよ。」
しかし009たちは巨大なシャボン玉みたいな透明な球に囚われてしまう。
「わたしはノア、移民計画の発案者だ。」ノアは右半身が黒くつぶれている。「どこの星から来たんだ!」「馬鹿な奴だ、まだ我々を宇宙人だと思っているのか。我々を生み育てたのはこの地球だ!」「それならなぜ、腕や足がまともではないんだ?」ああすまん、ジョー、当時は情報が不十分だったから仕方ないが、腕や足がまともではない地球人は結構いるぞ。私の知り合いにもいます。
「では話そう・・」とノアは衝撃的な話を語るのだった・・・
(続く)