第10話『地底の黄金宮殿』

脚本 伊上勝 演出/宮崎一哉
005が主人公である。アメリカの中南部、テキサスの辺りか?サボテンが点在する荒野を馬で歩いている005。そこに老人が駆る幌馬車が疾走してくる。幌馬車を追っているのはいかにも悪人顔の武装したメキシコ人の一団。むろん馬に乗っている。・・・一体いつの話だ?ライフルでメキシコ人どもを撃退する005。完全に西部劇の世界。しかし老人はすでに撃たれて虫の息。「私の一生を賭けた研究が・・・キャサリン・・・インカ帝国の宝・・・これを・・・地底の黄金宮殿の地図・・・」と小箱を渡され息絶える。
年代物の蒸気機関車が駅に着く。老人の娘、キャサリンが降りてくる。機関車も駅もやはり西部劇、というか背景の荒野を見ていると、むしろマカロニウエスタンの舞台となるスペインの荒野に似ている。「ジェロニモです。荷物をお持ちしましょう。」礼儀正しい005。005は極端に寡黙なイメージだが、このアニメではただ単に人当たりの良い青年になっており、結構よくしゃべる。夕陽が沈む丘、父の墓に手を合わせる二人、いいシーンである。「父の一生を賭けた研究、インカの地下宮殿をぜひ発見したいのです。」ジェロニモの家にて小箱に隠された地図を発見するがまたしても謎のメキシコ人の一団に襲われ、家は全焼し、キャサリンはさらわれてしまう。009と007に援軍を頼む005であった。
009が特殊ヘリで到着するも、またしても謎の攻撃で特殊フル装備のヘリは破壊される。砂漠で野宿する一行。焚き火を囲んでしばし談笑する009たち。実際ここまで西部劇の雰囲気をよく表現している。
ここでギルモア博士からインカ帝国の説明がある。
インカ帝国は13〜6世紀にかけて南アメリカのペルーを中心とするアンデス山脈一帯に高い文化を誇った一大帝国であった。その都はクスコと呼ばれ、国の広さはコロンビア、ペルー、チリまで及ぶ広大さだったのじゃ。そしてその文明は特に建築技術に優れており、自然の石を利用して立派な道路を作り、神殿や城を作り上げた。ところが16世紀の初め、スペインの艦隊がこのインカに攻めてきたんじゃ。インカ帝国は高い文化を持っていたが武器は無かった。スペイン軍の持つ鉄砲は神の叫びのごとく思え、また、馬を見たことがないため、天の使いが攻めてきたと驚いて降伏してしまったのじゃ。しかし、スペイン軍は馬で1万1千頭もあったと言われるインカの財宝を手に入れることが出来なかった。というのはある時、一夜にして財宝は消えてしまったのじゃ・・・」
前半は大体は正しいが、後半はどうか?武器はあったんじゃね。ドイツ映画『フィツカラルド』でも言っていたが、インカには白い神が将来迎えに来るという伝説があって、白人たちを神が来たと思い込んでしまった、という話があるね。
その後一行はジープで進んでいたが、途中でバッファローの大群に襲われ、ジープ大破。結局徒歩で出発するが・・・。えーとですね、アメリカからペルーまで一体何キロあるのか。目算で図ってみたが5000kmくらいある。北海道から九州の南端まででも3000kmくらいだぞ。7つの国境を越えて、パナマ運河を渡ってペルーまで歩いて行ったのか。
いくらなんでも地理感覚無さすぎだ。でもあっという間にアンデス山脈に着く。
いよいよ地下宮殿に到達した一行だが、彼らがそこで見たものは、なんと巨大ロボットだった!
西部劇→インカの秘宝→オーパーツと斬新な発想で引っ張った割には、結末はしょぼかった。ラスト、マチュピチュ遺跡も出てくるので、スタッフはきちんと研究していると思うのだが、まさかマヤ文明と混同しているわけではないよなあ。西部劇とSF冒険の組み合わせで新たにやってみないか(ああ、『スティール・ボール・ラン』があるか)。