実家へ行ってみたら、4,5年間行方不明になっていた『別冊宝島 怪獣学入門』(92年)が見つかる。

このムックは、『ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃』の発想の元となったと思われるゴジラはなぜ皇居を踏めないか?」「ゴジラは、なぜ南から来るのか?」と言った論文を始め、「ウルトラマンにとって正義とは何か?」などその後の特撮界の方向性を決定付けた考察が目白押しで、大変興味深い本である。
切通理作氏の市川森一論では、市川氏がカトリックキリスト教徒であることを初めて知る。そういえば市川脚本のウルトラマンはある意味特殊だった。彼がメインライターを務めた『ウルトラマンA』はキリスト教的倫理観に彩られており、『A』の最終回は今にして思うと、デビッド・フィンチャー監督の『セブン』の結末によく似ている。
悪魔とはただ単に悪い奴というのではない。人の信仰(または信念)を試す存在なのである。

キリスト者っていうのは、一言で言えば『試される者』だと思うんです。自分が信じる絶対真理があって、一方でドロドロした現実の人間関係があって、その中で絶えず試練を受けていくのがキリスト者だから、当然、ドラマでキリスト者を出すとすれば、彼の魂は絶えず悪魔と天使の間で試されていくことになる。」(市川森一談)


また、巻頭の椹木野衣氏の監修によるウルトラマンとモダンアート」特集は、怪獣とアートの関係を色刷りの資料によって大胆に考察している。
ダダ星人については、頭部=プリミティブ・アート+キュビズム、体=ブリジット・ライリーのオップ・アート(上図)、名前=ダダイズムときちんと指摘しており圧巻。
そのほか、ワイアール星人=マックス・エルンストエレキング=福沢一郎の『牛』*1、初期ガヴァドン=ヘンリー・ムーアとの関係を指摘する。