第45話『宇宙怪獣メガゾイド』

メガゾイド・・・なんかジャパニメーションのロボットものに出てきそうな名だが、ホントにそういう名前だ。しかし実は怪獣は脇役に過ぎない。ほんとのテーマは「クローン人間」の生を描く、本格SFである。
第二シリーズになってから、女優の美人率、主人公の豪邸居住率が高くなってだいぶ気前が良くなっているような気がするが、しかも今回はなんと!SF小説の巨匠クリフォード・D・シマック先生の原案である!話の密度についてはシリーズ中最高レベル。

未来、人類は外宇宙にも進出、色々な星の生物の標本を博物館に飾っている。中でも白鳥座のメガゾイドはその狂暴な性格、それでいて知恵もありしかも繁殖能力が旺盛という、危険な生物だった。そんなわけでメガゾイドは、地球に持ち込み禁止になっていた。
ところがヘンダーソン博士(ロン・ランデル)は豪邸の一角に研究のためメガゾイドを隠匿しており、ある夜その牢が破られていることを発見する。こりゃ大変だ、極秘に奴を探して処分しなければ・・・そこで彼は自分の複製“Duplicate Man”を作り(この時代、クローンという言葉はなかった)、彼にメガゾイドを殺させることにする(卑怯だ!)。


この作品の最大の特徴は、明快に未来世界の話、ということである。なにしろ太陽系の外まで人類は到達しているのだから、下界も少しは進歩していないとおかしいだろう。それで妙な未来ファッションや未来建築、未来カー、未来インテリアが出てくる。横道にそれるが、SF映画を撮る場合、未来ファッションはよほど勝算が無い限りやらない方がいい。アっと言う間にダサくなってしまい、作品そのものの評価にも影響してしまう。この作品の服装も正直恥ずかしい。ただ、TV電話が出てくるのだが、この外観が現代の液晶パソコンに奇妙に似ている。ただしプッシュボタンではなくてダイヤル式だが。


人間の複製は政府が厳重に管理しており個人が複製を作ることは違法であったが、ヘンダーソンはコネで作ってもらう。複製は放っておくと自我に目覚めてしまい、厄介なことになる。記憶、性格ともに本体と見分けはつかず、本体を殺そうとすることもある。そのためクローンは寿命が決まっている(どこかで聞いたことがある設定だ・・・)。ヘンダーソンは複製の寿命が5時間であることを確認して注文する。
ヘンダーソン№2は博物館の中で目覚める。懐にはピストルが入っていた。「メガゾイドを殺さなければ・・・。」


第1戦で、№2はメガゾイドに自分が複製であることを知らされる。「私は人間だ!」「君は使い捨てのロボットさ。」意外とインテリ風の怪物。愕然とする№2。
ヘンダーソンにメガゾイド横流ししたブローカー、エメットに会う(実在する、奇妙な建物に住んでいる)。エメットは顔半分を覆面で隠している。かつてメガゾイドに顔を削り取られたのだ。この辺芸が細かい。№2は、人と接触しているうちに本体の記憶がよみがえってくる。
№2は本体の妻ローラ(コンスタンス・タワーズ)に電話をかける。彼は彼女を恋人時代の呼び名「プリンセス」と呼ぶ。「電話の声、ある人に似ていたわ。昔のあなたよ。」妻に複製を作ったことがばれた。


№2は本体と対峙する。自分は一体何のために生まれてきたのか・・・複製にも生きる権利があるはずだ!ある意味、造物主に対する異議申し立てである(やはりどこかで聞いたことがある話だ・・・)。
本体と№2とローラの奇妙な3角関係が生まれる。あろうことか、ローラは複製のほうへなびいていく。「不思議ね。一人は結婚した人、もう一人は愛した人・・・」(確かにくたびれた本体より若くて新鮮な方がいいですね)邸内で3人の主張が緊迫している間に、メガゾイドも邸宅に侵入。本体から№2抹殺を請けおったエメットも侵入。そうこうしている間に寿命のタイムリミットも近づく。さあ、どうなる?結末間際になっても伏線が張ってあって、最後まで目が離せない!
コンスタンス・タワーズはブロードウェイのベテラン俳優。シリーズ中の女優では最大の存在感。ジョン・フォードの『騎兵隊』『バファロー大隊』、サミュエル・フラーの『ショック集団』『裸のキッス』などに主役級で出演。