『地球最後の男』(1964)

なんで日本未公開なのか分からないが、とんでもない傑作。とにかく、今後、この映画を観ないで書かれたゾンビもの論文は意味をなさず、過去のゾンビものの批評も根本から見直さなければならないのではないか?と思ったほど。

全体を覆う、感傷を排したクールな雰囲気がいい。モノクロ映像も硬質な感じでいい。死体が街のあちこちに散乱している様を短いカットで映し続ける冒頭のシーンから傑作の予感。とにかくビンセント・プライスはなぜか地球最後の男となっており、朝起きては、車で死体を片付け、ナゾの亡者たちを殺し、地図をチェックする毎日。その行動の理由は後半になるまで説明がない。映画はプライスが黙々と日課をこなす様を延々と写す。V・プライスは始終こわばった表情で鬼気せまる演技を見せる。
後半、おもむろに事の顛末が回想で語られるが、これがまた『復活の日』もびっくりの恐ろしい展開(回想シーンだけでちゃんとオチがついている)。
その後さらに急展開となり、ラスト、あまりにも皮肉な結末が待っている。結末はホラーというよりSF的な味わい。「何が人間を規定するのか?」という問いかけがある。
それにしても低予算でこれだけできるんだよなあ。