或る年表(或いは『ビューティフル・ドリーマー』から『パトレイバー2』まで)

Joetip2004-02-21

84年3月「風の谷のナウシカ」公開。
84年7月「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」公開。 
      AppleMacintosh128Kパソコン開発。16Bit、8MHz。
85年 電電公社が民営化、NTT株がブームに。一般市民にも株が浸透し始める。
   国鉄は跡地を売却し始め、これを皮切りに地価が高騰する。 
   1ドル=200.6円。日本、世界一の債権国となり、バブル経済が始ま る。
86年 チェルノブイリ原発事故発生。1ドル=190円台。
   8月「天空の城ラピュタ」公開。
87年  リゾート法成立。
国鉄が民営化、JRとなる。貿易摩擦で米国の対日赤字が1700億円突破。
   各地で「地上げ」が横行し、立ちのき騒動が発生する。
      Windows2.0。
88年3月 東京ドーム完成。
   4月 瀬戸大橋完成
   4月「となりのトトロ」公開。
市場最高の1ドル=120.45円の最終値を記録。
89年1月 天皇崩御
   2月 手塚治虫死去
 4月 消費税3%課税
   6月 天安門事件
   7月 「パトレイバー」公開。
   7月 「魔女の宅急便」公開。 
  11月 ベルリンの壁崩壊
      富士通、FM TOWNSパソコン開発。32Bit、16MHz。
90年8月 イラク、クエートに侵攻。
      バブル崩壊
      Windows3.0。
91年1月 湾岸戦争勃発。
   4月 自衛隊掃海艇派遣。
   8月 ゴルバチョフ解任クーデター、ソ連共産党解散。
  12月 ソ連崩壊。
92年4月ロサンゼルス大暴動。
   7月「紅の豚」公開。  
  10月 カンボジアPKO派遣。
  11月 民主党クリントン大統領就任。
      Windows3.1。
93年8月 冷夏、空前の米不足。急遽タイ米を輸入。
   8月 細川非自民連立内閣成立、55年体制崩壊。
   8月「パトレイバー2」公開。
      IBM、PS/Vパソコン開発。32Bit、50MHz。

やばい・・・今ニュースでやっていたが、テロ厳戒ということで機動隊にサブマシンガンを装備させて成田などの空港を警備させているとのことである。その映像を見ていると、いやでも「パトレイバー2」の戒厳令を思い起こさせる。

この年表は余興で「パトレイバー」の公開年と社会情勢の年表をリンクさせてみたものである。ちなみに「ビューティフルドリーマー」の直前までオイルショックの影響を受けた「戦後最長の不況」(当時)だった。
まあだから何なんだというわけではないのだが、こうして見ると押井作品は時代の抱える問題にかなり早い時期に対応しているのがわかる。
特に「パトレイバー1」の時代はまだ世間がバブルに浮かれている時期であり、この映画に描かれる都市再開発の裏に潜む闇を正面から描いた映画(他のメディアでも同様だ)はなかった。むしろ避けて通っていた、というか政治を語るのはダサイ、いやそれどころか政治になんか関わりたくないというのが正直なところだろう。
その後国際情勢は、ますますやばい方向へ進んだ。一言で言えば「混沌」である。しかし政治の世界では共産圏が崩壊して自由主義が勝った勝ったと大騒ぎ。世間でこれはやばいという実感はなかった。で、そんなときに「パトレイバー2」である。今、日本は平和、のように見えるがでは世界はどうだ?今世界で起こっていることをこの日本で再現したら俺達はこの事態に耐えられるだろうか・・・。
さらに好意的な見方をすると、この2作はその直後の日本を予言したと言えるだろう。1の後、バブルは崩壊し、2の後はこの通りの情勢だ。2作とも、現状と戦い、敗れた一匹狼が最後に世間に最後ッ屁・・・という内容でストーリー的にはあんまり意外性はないのだが、押井監督の感性と勇気には率直に敬意を表します。
皮肉なことだが、この国では極私的な心象風景を描く、とか男女の不倫がどうのとかが大人向きで高尚とされ(もちろんそれはそれで立派なものがあります)、子供向けの「特撮もの」や「アニメ」の方がむしろ高度な政治的問題を扱っていた。未だにそういう伝統(?)が生きているということである(そういう作家が主流からはずれてそういうジャンルに流れてきたという実情があるのだが)。