『虎よ!虎よ!』が2月下旬に復刻されるらしい

まさに黄金時代だった。雄渾な冒険が試みられ、生きとし生けるものが生を謳歌し、死ぬことの難しい時代だった・・・しかし、誰ひとりそんなことを考えていなかった。これこそ、富と窃盗、収奪と劫略、文化と悪徳の未来の実現だった・・・しかし、誰ひとりそのことを認めてはいなかった。いっさいが極端にはしる時代であり、奇矯なものにとって魅惑的な時代だった・・・しかしそれを愛するものとてなかった時代なのである。
中田耕治訳)


なんでもアルフレッド・ベスターの『虎よ!虎よ!』映画化の企画があるらしい。しかし今、忠実に映画化してもありきたりなB級映画に見えてしまうのではないか。発表されて半世紀、この小説のアイディアや世界観に影響を受けた小説、マンガ、映画は数多く、そのイメージは勝手に増殖し原作を読まない人でもそのネタの幾つかを知ってしまっているからである。
思いつくところで、『サイボーグ009』『サトラレ』『アキラ』『産霊山秘録』だが、探せばもっとあるだろう。アルビノの美女というものどこかで見たような気がする。実験の失敗で放射能を帯びている科学者とか(バットマンに出てくる怪人かよ)・・・また、クライマックスで主人公が見るビジョンは映画の『2001年宇宙の旅』を想起させる。
惜しげもないアイディアの大盤振る舞いに加えて、やたらに豪華絢爛、グロテスク、キッチュ趣味の舞台設定、まともな感性の人が一人もいない登場人物(そもそも主人公がキ○ガイ)など、1ページたりとて退屈しない。
まあ、だから相当気合入れないと成功しないのではないか、と思うのだが。個性豊かな登場人物たちをキチンと描きこんで欲しいですね。
個人的に好きなシーンは主人公と盲目のアルビノ美女がフラフラと大空襲の街を歩いているシーンかな。