伊福部先生は「動かない時計」

Joetip2007-03-05

前回、演奏者の血管がぶち切れるんじゃないかと書いたが、ホールで買ったCD「伊福部昭映画音楽の世界」の解説によると、実際、倒れた人はいたらしい。
このCDは本音楽祭と同日に発売され、伊福部氏の映画音楽の業績をまんべんなく網羅したもの。2枚のCDに72の映画音楽が収録されている。『原爆の子』『人間革命』『『三菱未来館』など、めったに聴かれないものも収録。それぞれの曲に伊福部氏本人のコメントがついてる。

この中の『宇宙大戦争』のコメント

「・・・マーチをあれだけ演奏するのは大変なことですから。金管の演奏者から『伊福部さんの曲はギャラを2倍もらわないと合わないなあ』なんて言われましたし、金管のメンバーが酸欠になって脳震盪を起こしてしまったこともありました。」

やはり・・・特に『地球防衛軍』『宇宙大戦争』あたりはかなりやばいと思う。今回の『タプカーラ』はCDで聴いたものよりテンポが速いように感じた。また気合が入っていたので、第一楽章が終わったところで思わず拍手してしまった人が多かった(気持ちは分かる)。
前回書き忘れたこと。

東宝社長の富山省吾氏が、司会の片山杜秀氏に「ゴジラは・・・どうなんでしょう?」と質問され答えるに「世界中に才能のある人たちがいます・・・そうした人を集めて・・・2010年を目途に・・・できたらいいなと・・・」
なんか曖昧な回答だが「2010年ごろに各国からクリエイターを集めて日本だけにとらわれない国際的なゴジラ映画を撮る」のように聞こえたが、やはり皆も?と感じたのか目立った反応は無かった。
伊福部氏の直筆の譜面が展示されていた。だいたい天才というものは悪筆というイメージだが、伊福部氏は字が実にきれいで、端正な音符だった。

藍川由美氏が大学院時代に伊福部邸にて色々話を伺った時の伊福部氏の言葉(パンフに掲載)。

「戦後は前衛的な音楽がずいぶん流行りました。しかし、新しいスタイルはいつか古くなる。そのたびに新しいものを求め、あちこちに目を移して動き回っていたら、一生に一度も"正時"を打てないまま死ぬことになりかねません。だから私は、動かない時計でいいんです。動かない時計は半日に一度、必ず"正時"を打ちます・・・」

時代に超然とした伊福部氏ならではのお言葉です。