『ロートレック荘事件』(続き)

152Pで第三の殺人が。これは被害者の一人称で語られる。こういう文章は筒井は得意だな。
この文章からするとやはり犯人は重樹なんだが。そしてここで重大な事実が出てくる。どうも禍々しい予感がしてくる。このあと、一気に事態は進展して、怒涛の真相にいたる。
それにしても
なめとんのか。
反則だろう、これは。
ええ?反則ではない?確かに犯人の名前は隠していないからなぁ。しかし、たとえば、この小説を創元推理文庫で上梓したら、困ったことになるのではいか?あそこは表紙裏のところに登場人物リストの記載があるからな。登場人物の名を全て列記しなければならないだろう。え、見取り図の絵に「浜口」って書いてあるだろ、って?うーん。
とは言うものの不快な気分ではないが、それは私が筒井康隆の小説を読み慣れているからだろうな。ああ、筒井さんならこういうことやりかねないな、という心の準備ができてるから。推理小説としてではなく、純粋に小説を楽しむ、という観点からなら、これは実に面白いし、名文だと思う。しかし純正のミステリーファンで筒井を読まない人がこれ読んだら怒るんではないかな?
ただ、最初から読み直すと、文章が丁寧に練って書き込まれていることがわかる。本当に筒井マジックって感じですね。名作。