第24話『非情の挑戦者』

脚本/安藤豊弘 演出/田宮武
アフリカ、008は子供を助けるために人食いワニと格闘する。このシーンは言わずと知れたヨミ編の008下半身崩壊シーンからの抜粋。ワニの造形がそっくり。こっちではなんなくワニを退治したが、帰りのボートに載ろうとしたら、突然鉄の蓋がかぶさり、ボートをジェット噴射で空を飛んでゆく。呆然と見守る子供。ドイツでは004が鉄パイプに磁力でくっついたままパイプごと空を飛び、002も愛用のスポーツカーが後ろからジェット噴射し、やっぱり空中へ拉致される。002「誰だ、こんないたずらしやがったのは!」いたずらというレベルじゃないな。とにかく、サイボーグ245678の6人は何者かにあえなく誘拐されてしまう。ある意味サイボーグ戦士最大の危機!
009はジェットにのって捜索に乗り出すが、途中で見事な操演をする2機のジェット機に会う。二人の兄弟は009に挑戦状を叩きつけると言う。「俺はガイ・クルテール。」「俺は弟のビル・クルテールだ。」
機械の合いの子であるサイボーグどもに、我々科学者の優秀さを見せ付けるためだ。というわけで009と謎のジェットの空中戦が始まる。都会では被害が出ると言うので、人のいない海岸でやろうと009は申し出るのだが、この海岸では無関係な母子が遊びに来ていたのだ。
静かな海岸で、母をモデルに絵を描いている娘(ちばてつやのマンガに出てくる少女に似ている)。なんという平和で心安らぐ光景であろうか。しかし3機のジェット機バトルに巻き込まれ、この風景は一瞬のうちに地獄絵図と化してしまう
バトル中止して母子を救出した009であるが、お母さんの方は頭に重症を負っている。治療をギルモア博士に任せはしたが予断は許さない状況だ。それにしても直接母子を撃ったのは相手だが、ここをバトルの舞台にしようと言ったのは009だし、責任の一端はあるんじゃないの?
そのころある孤島では、245678の面々が電磁牢に幽閉されていた。結構危機感も無くまったりしているサイボーグたち。やはり肝が据わっているということだろう。ドルフィン号で島に潜入した009はこの島が一大科学要塞だということに気付く。
「フフフ、お前たちサイボーグはたった二人の我々兄弟に手も足の出ないのかねえ。」「君たちは一体何者だ?」「人間さ。」「でたらめ言うな、ただの人間にこんなことが・・・」「まあ、次の部屋を見れば分かるさ。」
次の部屋を見て009は息を呑んだ。「その中央にあるのが、優秀な科学者であった我々の父が作った催眠教育カプセルだ。我々は生まれるとすぐこのカプセルに入れられ、電子頭脳が記憶している科学知識を詰め込まれた。そして成長に必要な栄養はすべてロボットがまかなった。特に頭脳に必要な栄養は間断なく補給されれた。そして5歳にして当時発表された物理学の新理論を難なく理解するほどの頭脳になっていた。その後15年間、電子頭脳による教育が続けられ、1年前やっとそのカプセルから出られた。我々の頭脳には誰にも負けない力が蓄えられていた。」その結果SFマンガによくある頭部が大きく、胴体が貧弱な未来人体形の兄弟が誕生する。この機械群は、ヨミ編の巨人像の中にあった「ブラックゴースト」に似ている。この二つの脳が兄弟の両親なのだろうか。
で、その力を実証するために、世界最強といわれるサイボーグたちに挑戦しようとしたのである。そういうことならこんな物騒なことをしなくても発明特許や経済界に進出するとかした方が有効だと思うのだがね。「009、君たちの仲間は我々の作った『格子無き牢獄』から動くこともできない。君は仲間を救い出さないのかね?この電磁牢は自動的に爆発するのだよ。」これを聞いてやっとええ〜?と驚く面々(のんき過ぎる・・・)。「彼らを救いたければ我々と戦いたまえ!」
004「009、俺たちにかまうな!ドルフィン号で逃げろ!」「ははは!ギルモアたちもすでに袋の鼠だ!」ドルフィン号の周りには無数の機雷。「何というひどいことを、艇内にはお前たちに傷つけられた重症の人もいるんだぞ!」「それがどうした。」「どうしたって・・・お前たち人間だろ?心は無いのか!」「関係の無いことだ、009!武器を貸してやろう。」「いらない!こっちにはお前たちが千年かかってもできない武器がある。来い!」外に出る009。
005「009はどんな新武器をもってるんだ?」004「お前さんにもあるさ、2も、6も、8も、7にもあるものだ!」004胸を叩いて「ここに勇気ってものを持ってるだろ?」「そうだ、素晴らしい武器だ!」サイボーグたちがこれだけ一同に団結するシーンってあんまりなかったような気がするぞ。やはり最終回が近いからか。
勇気を武器に形勢逆転したサイボーグたち(詳細は省く)。009は天才兄弟と空中バトルの最中である。しかし一方ドルフィン号では、例のお母さんが治療の甲斐なく死んでしまう(今だったらこんな展開ないよなあ)「おかあさーーん!」母の亡骸に縋って泣き叫ぶ娘。言うまでも無いがPTSDは必定、今後この子は心のケアが必要だろう。
この知らせを聴いた009は怒りに満ちて、ビルをなじる。「お前たち平和に暮らしている人たちを虫けらのように殺したんだぞ!聴け!この悲しい声を聴いてもなんとも思わないのか!心に響かないのか!」むりやり泣き叫ぶ少女の声を敵に聴かせる009。これってある意味、新手の精神汚染攻撃だよな。しかし少女の叫びに心無い天才児の判断にもぶれが生じてきたのだった。
19話と同じく、機械に支配される人間の哀しさを描く。009たちも半分機械であるが、自分たちの意思と勇気でその機械をコントロールしている。心のない人間、心のある機械、より良い世界にとってどちらが有益なのか、見るものに訴えかける。