映画秘宝6月号

最近は「映画秘宝」も買ったり買わなかったりだ。私はカンフー映画に詳しくない、というか興味がない(それでもジャッキー・チェン山口和彦監督の映画は観る)。あとこの雑誌でやたら推している三池監督の映画のどこがいいのかさっぱり分からん。というわけでいつも半分くらいしか読まないことになるのである。

6月号は『緯度ゼロ大作戦』の未DVD化の真相がメインだが、他にも面白い記事が載っていた。

ロベール・アンリコ監督のデビュー作

『ふくろうの河』がDVD化!

ふくろうの河 [DVD]

ふくろうの河 [DVD]

実は観ていない。しかしこの映画がホラー・ファンタジーの傑作として長いこと伝説となっていたのは知っている。本来3部作だということで、「衝撃のラストで世界中の映画ファンを唸らせた傑作」として知られているのは、第三話の『アウル・クリーク橋の一事件』のことだそうである。おそらく買うだろう。


加藤泰特集

日ごろ怪獣だ、刑事まつりだと騒いでいる「秘宝」誌だが、この特集のように、ちゃんと映画の本流の何たるかを弁えているのが良いところである。

加藤泰監督特集がシネマヴェーラ渋谷で始まっています。
http://www.cinemavera.com/timetable.html

沓掛時次郎 遊侠一匹 [DVD]

沓掛時次郎 遊侠一匹 [DVD]

加藤組の撮影はまず穴掘りから始まる・・・とまで言われたローアングルの徹底を初めとして、妥協を許さない演出は、ある意味黒澤明監督以上であった。しかしながら彼は終生、賞というものをとったことがなかった。「ヤクザもの」「時代劇」「ギャングもの」「SF」(『真田風雲録』)など、芸術に縁のないジャンルばかり撮っていたこともその要因だろう。さらにその頑固さゆえ、映画会社は彼を使わなくなり、70年代では本数が激減、渾身で撮った78年の菅原文太主演『炎のごとく』(なぜか未ビデオ)は、「良識的な」評論家から「血が流れすぎて俗悪」と見当違いの批判を浴びる始末。その批判に対して監督は毛筆で書いた膨大な量の反論文章を上梓したと言う。
同じように干されていた鈴木清順監督の不死鳥ぶりと比べると、生き方が不器用すぎたのかも知れない。
ところで、映画ファンを自称する者で、加藤泰を知らない、または観たことがない、という人がいるとしたら大変恥ずかしいことと言わねばならない。特に『沓掛時次郎 遊侠一匹』は必見である。この映画の作り物の「夕日」と「雪」を見て衝撃を受けない人間がいるだろうか。CG映画で失ったものがここにある。スクリーンで観る機会は多分あまりない(一大ブームが起これば別だが)ので、一度足を運ぶことをおすすめします。