『亡国のイージス』を観る(ネタバレです) [DVD]" title="合衆国最後の日 [DVD]">合衆国最後の日 [DVD]出版社/メーカー: 日活発売日: 2004/07/09メディア: DVD クリック: 13回この商品を含むブログ (26件) を見る


最近歳のせいで省エネ鑑賞(ダメと思った映画は観ない、ダメと思う基準はカン)を励行していたのだが、ひさびさに酷い映画を観てしまった。
なんだこれは?娯楽映画なのか?途中何度もあくびが出ました。この映画はこれまでのハリウッドや韓国の映画からのパクリが多いが、皮肉なことに、これまでクソだなんだと言ってきたハリウッドの娯楽映画が傑作に見えてしまう。『ザ・ロック』は酷い映画だと思うがこれに比べればはるかに面白い。少なくとも『ザ・ロック』は退屈させない努力をしている。ラストの信号(?)の見せ方なんて、自主制作レベルではないか。また『エグゼクティブ・デシジョン』のパクリシーンがあるが、「皆さんモトネタを知ってるでしょうから」と言わんばかりにやる気がない。『エグゼクティブ・・・』の「その手があったか!」という爽快感は皆無(『エグゼクティブ・・・』は面白い映画。観ていない方にはおすすめ)。
ひょっとしてこの映画は、娯楽映画として当然見せるべきシーンを見せない、盛り上がりを欠いた淡々とした演出をすれば何かこう、高級な映画に見えるのではないか?という途轍もない勘違いをしているのではないか?そういう演出もありえるが、その場合(言うまでもないことだが)、それに代わる観客を圧倒するなにかが必要だろう。重厚な、或いはカリカチュアされた人間ドラマ、胃の痛くなるようなサスペンス、斬新な主張、などであるがもちろんそんなものはない。あると言えば本物の自衛艦や戦闘機が見られるということか?まさかそれで満足してしまったのだろうか。ドラマと言ったがそのドラマも酷い。
反乱する自衛官がいてもいいが、北朝鮮の人と結託する理由がさっぱりわからない。普通はどちらかだ一方と思う。思うに北の工作員だけで自衛艦を占拠するのは説得力なないと判断したのか、しかしこれでも荒唐無稽。実際艦内で自衛官工作員が仲間割れしていたが、当たり前じゃん。こんなことも予測しないで組んだのだろうか。この反乱自衛官たちは馬鹿としか言いようがない。防衛庁前面協力だが、こんな間抜けな自衛隊を出す理由が分からない。私は立派な愛国者ではないが、オタオタしている自衛官は正直観たくなかった。

また「日本人は60年間フワフワ浮いていただけだ!」なんてセリフがあるが、予告編で観たときは火の出るようなディスカッションの果てにこういうセリフが出たのかなと思っていたが、休憩の合間にポロっと言ってみただけ。戦後60年間日本人がフワフワしてただけとは本気で思っているのか?親父の三国連太郎の若い頃の映画見てそう言えるか?そう思うのは君はフワフワしているからというだけでしょ?君の周囲の人々は一生懸命生きていて君もそういう人たちがいるから生かされているのでしょう。で、その「亡国」の象徴が電車の中で携帯見てる人たちって・・・センスなさ過ぎで底が割れた。
正直言って、これに比べれば昔の左翼映画の方がまだ面白い。山本薩夫監督の『皇帝のいない八月』は出来の悪い映画だが、渡瀬恒彦のカリスマ演技もすごいし、思わずゾクっとする場面もいくつかあった(渡瀬と山崎務が駅で対面するシーンとか三国連太郎が拷問するシーンとかな)。それだけでもうモトをとったと思わせてしまう迫力があった。
またロバート・アルドリッチ監督の『合衆国最後の日』(写真)はこの手の映画のはしりと言えるが、篭城側、攻撃側の双方の言い分と弱点を徹底的にさらけ出しており、さながら後半はディスカッションドラマの様相を呈しているのだが、それでも画面の緊張感は途切れないのだからさすがと言うしかない。