新文芸座で庵野秀明、樋口真嗣両監督トークショー


昼、大和市内で物件の見学をする。やはり安いところは日当たりが悪い。BSアンテナ付けられるのか?というくらい。ただ最近はどこも設備がいい。フローリング、洗濯機を置くスペース、ケーブルTV、さらに驚くべきことに風呂にはひねるだけで温水が出る設備、シャワーまである。まるでこの世の楽園のようである。


その後、小田急線に乗って、池袋まで。性懲りもなく文芸座、岡本喜八監督特集へ。本日は『どぶ鼠作戦』『沖縄決戦』。
『どぶ鼠作戦』は初見。自由であるには真にプロフェッショナルであらねばならないという相変わらずきびしい話。監督のパターンとして、目の前(人物とカメラの間ということ)にバーンと何かが落ちてくるというのがあるが、今回も笑わせてくれる。


今回は、庵野秀明氏と樋口真嗣氏のトークショーがあった。この二人に司会なしで勝手にしゃべらせるのだから無謀な話である。案の定、話がもたない。それでも面白いことを聞いた。
樋口氏はガメラ2を担当していたとき、隣のスタジオで編集作業をしていた岡本監督に会ったのが最初だと言う。この時、監督はすでに公開されていたイースト ミーツ ウエスト』の編集をしていた・・・。理由は忘れたが、この映画は監督の意に沿わない編集のまま上映され、私も公開時に観ていたが、樋口氏と同様、なんかトロい演出だなーと思っていた。この間、浅草東宝でその再編集後のいわゆるインターナショナル版を観たが、ちゃんと監督の従来のテンポが戻っていたので驚いた。再編集のことはそのとき初めて知った。
その後、樋口氏は監督と会う機会がたびたびあったそうだが、そこで笑ったのが、樋口氏が好きな映画がことごとく岡本監督にとって触れたくない映画だったということ。『ブルークリスマス』『沖縄決戦』『ガッチャマン劇場版』・・・「あの映画が好きなんですよ♪」というたびに地雷を踏んだらしい。『ガッチャマン』は常識のある人ならばそもそも話題にしないと、庵野氏に突っ込まれる。
結局、70年代に入って、思うような題材が撮れなくなってくる、予算的にも。それで満足のいくものができなくなってしまったということではないかと推測する。皮肉なことだが私や樋口氏の世代はそういう頃から喜八映画に入ってしまったため(中には『ブルークリスマス』が喜八映画初体験という人もいるだろう)、そういう皮肉な結果になってしまった。不本意な作品でも岡本監督の映画は十分人を引き付けるものがあるということだろう。
庵野氏は『沖縄決戦』が大好きで、100回くらい?観たそうである。自分のアニメがテンポがいいとしたらそれは岡本監督の映画の影響、と断言していた。確かに庵野氏の言うとおり、丹波哲郎のカリスマ演技は『日本沈没』よりも前にこの映画から始まった、と言っていいだろう。また、岡本監督が特撮が嫌いというのは聞いていたが(『遠い海から来たQoo』はアニメだから引き受けたらしい)、『沖縄決戦』は特撮がある。県庁の爆発、米軍艦を俯瞰で撮ったシーン、米軍機の編隊など。特撮嫌いと言いながら、それが結構よく出来ている。まあそれはいいのだが、その後


岡本監督の映画を観て、アニメは止め絵でもいいんだ、ということを確信しましたね。」(正確に覚えてないがそんなとこ)と発言。


それはちょっと・・・いや確かに止め絵の効用は認めますが、そんなに断言されても・・・。場内あちこちで失笑が起こってましたぞ。


売店で買った名古屋シネマテーク叢書「岡本喜八」によると小松左京の『日本アパッチ族』を映画化する話もあったそうである。しかし『江分利満氏の優雅な生活』があまりにもユニークな出来であったため偉い人の逆鱗に触れ、もうお前の企画は採り上げない、ということでダメになってしまったらしい。ぜひ撮って欲しかったが『江分利満氏』もなくてはならない作品だし、まあうまくいかないものですな。


と書いていると、NHK成瀬巳喜男監督没後35周年のことを解説していた。成瀬監督は岡本監督の師匠。佐藤忠男さんは元気だなあ。