高田渡氏の訃報を聞いてから、どうも怒りに近い感情が湧き上がってきて仕方がない。同世代の弘兼憲史氏はあの程度のマンガでなんで巨万の富を築いているのだ、とかそれもあるが、やはり私はこの時代が性に合わない。いや、間違っているとすら思う。そう確信したということである。

反対   金子光晴


僕は少年の頃
学校に反対だった
僕はいままた
働くことに反対だ


僕は第一 健康とか
正義とかが大きらいなのだ
健康で正しいほど
人間を無情にするものはない


むろんやまと魂は反対だ
義理人情もへどが出る
いつの政府にも反対であり
文壇画壇にも尻をむけている


なにしに生まれてきたと問はるれば
躊躇なく答へよう 反対しにと
僕は東にゐるときは
西にゆきたいと思ひ


きものは左前 靴は右左
袴はうしろ前 馬には尻をむいて乗る
人のいやがるものこそ 僕の好物
とりわけ嫌ひは 気の揃ふということだ


僕は信じる 反対こそ人生で
唯一つ立派なことだと
反対こそ 生きてることだ
反対こそ じぶんをつかむことだ

私が一般的にキ○ガイの称号を得ているとしたら、それは高校時代にこの詩を読んだから。