みゆき座閉館

たまたま有楽町のみゆき座の前を通りかかったら、みゆき座閉館記念上映会をやっているではないか。みゆき座で上映した歴代の映画を一本300円で上映しているのだ。明日は『ジョニーは戦場へ行った』が観られるぞ!
なんと、昼は『博士の異常な愛情』を上映していたではないか。まあ、この映画は名画座でさんざん観たが、ロードショー館であるみゆき座で観るというのも面白かろうと思った。
で、次の『リバー・ランズ・スルー・イット』を観る。この映画も観るのを先送りにしていたのでちょうど良かった。

『リバー・ランズ・スルー・イット』は美しい映画だった。淡々とした演出で昔の映画と錯覚してしまうが、ブラッド・ピットが出演しているし、92年の作品である。厳格な牧師の父、コツコツタイプの兄とイケイケの弟(ブラピ)。就職浪人の兄は故郷でちと肩身が狭いが、派手な葛藤もなく、川が流れるように時は移っていく。親兄弟の絆を、川釣りの技の継承を通して描く演出が見事だ。風景の切り取り方もうまい。ロバート・レッドフォードの監督としての才能は本物。
牧師の父は最初の方で、「この川の石は砂が5億年かけてできた」とか息子に教えていたのでキリスト原理主義者以外はやはりそういう認識なんだな、と思った。


みゆき座の中はやはり年季が入っている。ニス塗装の木製の手すり、禁煙の文字が磨り減って読めない禁煙の掲示灯、天井の丸い空調。幕の隅には『コスモポリタン』『オリーブ』の広告(まだ発売してたっけ?)。最大の難点は館の大きさに比べてスクリーンが小さいということだ。


お嬢様っぽい映画のイメージがあったせいか、みゆき座で観た記憶は『マルコムX』以外には思いつかない。しかし配られた閉館記念パンフを見ると、特に60〜70年代は重要な映画を上映し続けた。『水の中のナイフ』『道』『軽蔑』『柔らかい肌』『その男ゾルバ』『ナック』『卒業』『アポロンの地獄』『テオレマ』『サテリコン』『フェリーニのローマ』『Z』『暗殺者のメロディ』『カッコーの巣の上で』『愛のコリーダ』『ラストワルツ』・・・

今で言う単館系の良質な外国映画を一手に引き受けていたみたいですな。80年代以降も『クリスチーネ・F』『珍説世界史』『ネバー・クライ・ウルフ』『バンデットQ』『ラブINニューヨーク』『おかしなおかしな石器人』など、誰をターゲットにしてるのか分からない映画を続々公開した。

みゆき座歴代入場人員ベスト10
1 『エマニエル夫人』    373107人
2 『嵐が丘』        331649人
3 『卒業』         327479人
4 『わかれ道』       254063人
5 『ジョニーは戦場へ行った』229672人
6 『カッコーの巣の上で』  228025人
7 『さらば夏の日』     226687人
8 『ジェーン・エア』    221297人
9 『二人だけの窓』     201373人
10『嵐が丘』(再映)    193850人

特筆すべきは『ジョニーは戦場へ行った』だろう。当時のキネマ旬報読者のベスト10でも第一位となったが、この映画がヒットしたのは日本だけと言われている。『カッコー・・・』『エレファントマン』と、日本で異常にヒットした映画には何か共通点があるような気がするが・・・?


ちなみに『博士の異常な愛情』のデータは

1964年10月6日〜10月23日
入場人員14873人
興行収入5078222円

完敗ですた_| ̄|○