キンメモドキの襲撃


華氏911」を観ながら、こういう文章をなんとなく思い出したよ。

「いいかい、この勝負には車やテレビジョンを売り込むことより一つだけすごく有利なことがあるんだ。こういう物だと、我々は買わないわけにはいかないってことだ。ぜいたく品、つまり近所の連中の目をむかせるようなでかいけばけばしいもの、なくてすむってものじゃない。買わなければ我々は死ぬんだ。なにかを売りつける方法は買手の心に不安を植えつけることだ、それが売る側の常道だ。不安感を植えつけるーいやな臭いがしますねとか、おかしな感じですね、とか言ってな。だがこいつは防臭剤とかヘアオイルとかの場合と違って冗談ではすまされない。これからは逃れられません。買わなければ、死ぬんですよ、って。完璧な売り込みの口上だ。買え、しからずんば死ねー新手のスローガンだ。」
フィリップ・K・ディック『フォスター、お前、死んでるところだぞ』(1955年)より 友枝康子訳

「この世界では、才能のある者は兵器を設計し、才能のない者はそれを使うんだ。」
同『薄明の朝食』(1954年)より 鈴木聡訳