「明日の天気は?」

当初から良質なドラマを提供してきたウルトラセブンも後期になってくると予算が逼迫し、灰皿を円盤、注射器をロケットに見たてる有様であった。しかし実相寺監督はそこを逆手にとって怪獣もセットも作らずに他の惑星の様子を描いて見せた。今みると、前衛芸術ドラマとしても見ることが出来るだろう。
実際、このドラマはジャン=リュック・ゴダール「アルファビル」(1964年)の影響を受けているのは明らかだろう。「アルファビル」は普通のパリの街を「パリに似せて作った宇宙都市」と言い切って撮ったSF映画である。コンピュータに支配される人間というコンセプトも同様だが、長い廊下を歩くシーン、政治犯の処刑(傑作、笑えます)、コンピュータルーム(構図もほとんど同じ)、集合住宅と共通点が多い。しかし不気味さという点では実相寺の方が上であり、日常の風景が撮り方次第でこんなに変わってしまうのかと衝撃を受けた映像作家は多いと思う。
この系譜はどういうわけか、ソ連のヌーベルバーグ、アンドレイ・タルコフスキーに受け継がれ、70年代の東京を未来都市と言い切った惑星ソラリス」(1972年)を撮った。