『サマーウォーズ』

をDVDで観た。
よくできた話で、いい映画だとは思うが、第一印象はとにかく「薄い」ということだ。薄いというか軽いというか、細田監督は押井、宮崎に続く日本アニメを背負って立つ人材だと聞いているが、こんな毒のない健康的なアニメでいいのかと思ってしまった。
どうでもいいことだが、この監督のキャラデザイン、妙に手足がだらんと長い、線の細い造形が好きになれない。はっきり言って気持ちが悪い。まあ好みの問題だろう。
大家族をテーマにしていながら皆いい人というものどうなのか。万作、万助を初めとするそれぞれのキャラは面白いのだが。侘助という曰くありげな人物が出てきて(大家族となれば一人や二人は問題人物がいるもの)、期待させる。しかし家族から疎まれていながら犬だけは尻尾を振ってじゃれて来るという演出で最初から「実はいい人」という了解を取り付け、務めて観客を不安にさせないような配慮がなされている。これは丁寧な演出と言えるのだろうか?
侘助登場から花札のシーン、おばあさんの「今、ここで死ね!」までのシーンがこのアニメの演出のピークだった。侘助が悪びれもせずちょろまかした金で開発したウィルスのことを嬉々としておばあさんい話すシーンがいい。あたかも飼い猫が主人に褒めてもらいたくて狩ったネズミを居間にズラっと並べてびっくりした主人に怒られる・・・という猫飼いにはありがちな体験を連想させる。この悪意のなさ、無邪気さが、彼の異常さを表現していて出色のでき。まあそれもおばあさんの死を知ってあっさり方向転換てのもなんか予定調和だなあと思う。90近いのだからいつ死んでもおかしくないし、ウィルスによって被害が彼女の健康にも及ぶことくらい予測できそうなものだが。
総じて日本の田舎の大家族のドロドロ人間関係を描くには、細田監督はいい人過ぎたのだろう(最初からそんなの描くつもりはなかったって?えー!)
そもそもアニメなのに派手な絵がないというものもどうなのか。クライマックスの探査機墜落のシーンもひどくあっさりしていている。普通ああいうシーンはアニメーターの腕の見せ所で、爆風や家屋の崩壊を丹念に描くと思うのだが、どう見ても興味がなさそうである。クレーターの俯瞰すらない。
というか派手な絵は撮らないと言う芸風らしい、やはりアニメ界の小津や成瀬を目指しているのだろうか。それにしては人間洞察がそんなに深いとも思えないのだが。というか女の子にチューされて鼻血ドバーって昭和40年代のアニメかと思いました。
とは言うものの、いろいろ苦言を呈したが、難しいことを考えなければ楽しい映画であることは間違いない。


奇子 (上) (角川文庫)

奇子 (上) (角川文庫)

このアニメ観て日本の大家族っていいなあと思っちゃった人はこれもどうぞ。