DVD『ふくろうの河』

は『冒険者たち』で有名なロベール・アンリコ監督のデビュー作。題材にアメリカの南北戦争を選んだ、3つのオムニバス形式の映画である。これは3つ目の作品がナイト・シャラマン映画並に衝撃的だったために有名になった。
でも、今観るとバレバレというか、予想しなかった人のほうが少ないんじゃないかな?『ボルヘス怪奇譚集』にも似たようなのがあった。手塚治虫の短編にもあった。手塚作品は確かマヤ帝国の時代ななんかの話だった。あれは哀しいマンガだった。なんか『ふくろうの河』を知らない人には何を言ってるのかさっぱりわからない文章だが、仕方が無い。
でもいい映画です。ちょっと思ったんだが、60年代って白黒映画の最盛期だったんじゃないかと思う。主流はもちろん50年代以前には違いないが、レンズの発達で本当にきれいで滑らかな白黒映画がたくさんあったような気がする。特に60年代前半だ。と言いつつ思い出せないが『甘い生活』、ミクローシュ・ヤンチョーの『密告の砦』、『僕の村は戦場だった』とか。この映画も森の風景、木漏れ日の映像、河の流れ、どれも本当に美しかった。ちょっとテレンス・マリックっぽい執拗な動植物の描写がある。
3つの作品は、英雄的な面はなく、戦争は人の人生を破壊し不幸にする、というテーマで統一されている。戦争のむごい面を描く一方で、ヨーロッパ人らしい皮肉なユーモアもある。どちらにしてもアメリカ人には描けない、描きたくない南北戦争が描かれる。
特に2番目の話は、森に遊びに行った男の子が、瀕死の部隊に遭遇するのだが、皮肉に満ちている。テーマパークでもあるかのように苦しむ兵士たちを見て子供が面白がるのである。フラフラの兵隊の動きがロボットやサーカスのパントマイムの動きのようにみえてしまうというのは、子供の残酷な一面を表している。そうして眺めているうちに衝撃のラストが・・・。3作ともファンタジー色が強く、美しい自然を舞台にした残酷な童話、と見做すことができるだろう。