第23話『復讐鬼』後編

話を整理する。ある薬を目に噴霧するとその薬の効果で、今まで見えなかった怪物が見えてしまう。その怪物の容貌は不定形で、アメーバのように形が定まらないが、部屋を覆うくらい巨大である。一瞬人間の顔のように見える。怪物を見た人は精神錯乱をおこして自傷行為を起こして死に至ってしまう。その怪物は幻ではなく、物理的に存在しており、相手に危害を加えることが出来る。銃やスーパーガンでは怪物を傷つけることはできない。アメーバのように分裂し、また集合して巨大化する。今のところ冷凍銃で一時的に動きを封じる程度のことしかできない。不思議なのは、怪物が存在しているのは確かなのだから、人に気付かれないうちに襲った方がいいはずなのである。つまり第一の目的は標的の人間にその存在を知らしめることであるようだ。
アメリカ、グランドキャニオンを見物している002は、「怪物だー!」と錯乱し、崖から飛び降りる男(6)をジェットで救出する。報告を受けた009はこれで具体的な糸口がつかめるのではないかと推測する。男は1週間、日本に滞在したことがあるのだ。
そのころギルモアは、今回の事件で失踪した技術者(7)の妹(8)が003にそっくりなのを発見する。「怪物はこの妹さんと勘違いしているんじゃろう。」そんなアバウトな真相なのか。その時001が泣き出す。強力な精神波がでているのだ。001の超能力は無力化され、003は怪物の精神攻撃に抵抗するが、耐えられず連れ去られてしまう。
001はその間夢を見た。中年の紳士が背中を刺されて倒れている場面だった。密室の中だった。一方例のアメリカ人は滞在中に箱根ロープーウェイに乗っていることが判明する。新聞の記事からとうとう真相が判明する。ある紳士が箱根ロープーウェイの中で不良にからまれ、ナイフで刺し殺されるという事件があった。犯人は最初に狂死したあの囚人である。
一方、003は中世のおどろどろしい古城を思わせる屋敷の中の地下牢にいた。そこには同じような方法で連れてこられたホトケの宮島さんと残り(9)(10)(11)の男たちの4人もいた。
「フフフハハハ、呪われろ、呪われろ、苦しめ、苦しむのだ。お前たちは死ぬのだ!」「やめてくれ、俺たちが何をしたと言うんだ!」「何もしない。何もしなかったということが罪になるのだ!」
「お前たちはあの時、ロープーウェイに乗っていた・・・。」楽しいロープーウェイの風景。乗り物が揺れたはずみで子供が不良のウィスキーを落としてしまう。てめえ、と母子に詰め寄る男。そこでやめたまえ、と紳士が仲裁する。しかし取っ組み合いのけんかになる。「やめろ、やめてくれ、誰か、誰か止めてください!」一同無関心。そのうち不良はナイフを出し、紳士はあえなく殺されてしまう。ここできてやっとああ〜!と騒ぐ乗客たち。
このへんの謎解きの描写はフランソワ・トリュフォーの『黒衣の花嫁』を思い起こさせる。
もしあのときお前たちの誰か一人でも手を貸していれば、私は死なずに済んだのだ!」そういうわけで怪物はこの時ロープーウェイに載っていた者全員に復讐しようとしてたのだ。
これは我々も他人事ではない、日ごろ誰にでも起こりうる事態ではないか。こうして知らず知らずのうちに人の恨みを買うということはあり得ないことではない。「お前たちは私を殺した、次は私がお前たちを殺す!」
新聞の記事によれば、被害者の紳士は江木博士と言う、心霊学の権威だった。彼には照代という娘がいて、評判の仲良し親子だったという(うたたねするお父さんにそっと毛布を掛けてあげる父娘の平和な風景のイメージ)。
ではその照代という人が糸を引いているのか?とにかく江木邸に直行だ!9267の4人で向かう。
屋敷の地下は迷路のようになっていて怪しげな仕掛けがしてある。針のある落とし穴だの迫り来る壁だの散々いたぶられた末に、5人は手を鎖で繋がれ、壁に磔になっている。
「クククク、ここでお前たちにチャンスをやろう。ここに武器を用意してある。お前たちがお互いに戦い、ただ一人勝ち残った者は許してやる。どうだ?」バトル・ロワイヤル
「私は戦うぞ!」「やる、やるぞ!早く鎖を解いてくれ。」やる気満々の皆さん。003「皆さん、やめてください(泣)」参加表明をしたものは鎖を解かれ、斧や槍や刀を手ににらみ合う。「やるんだ! みんな死ぬまで戦い続けるんだ!」
そのころ009たちは・・・。屋敷に着いたのはいいが、たかが蝙蝠の大群に行く手を阻まれ、なかなか進まない。
こちらではとうとうバトルロワイヤルが始まり、003の見ている前で凄惨な殺し合いが始まる(彼女は拒否したので鎖に繋がれたまま)。これはもう003のPTSDは必定だろう。事が終わった後も心のケアが必要と思われる。で、見事バトルを制したのは意外やホトケの宮島さんだった。「ククク、これで残ったのは女とお前だ。」宮島さんの血まみれの剣が003にせまる!「やれ!」
そのころ009が壁をぶち破ると、不思議な部屋に行き着く。女性はカプセルの中に横たわり、周りには精巧な機械群が設置されている。「江木さんのお嬢さんじゃない?」しかし機械は蝙蝠の大群がからまって大爆発する。
怪物のイメージが崩れていく。間一髪で宮島さんは009に阻まれる。「助かった!アヒャアヒャ・・・。」宮島さんは狂ってしまいました。屋敷は炎上した。
ギルモア「わしが思うに魂を取り出す機械だったのだろう。人間が死ぬとほん少し軽くなる、それは魂が抜け出したからじゃ。いわば生きながら幽霊となって力を発揮したのかもしれない。しかしその謎を解く鍵は永久にあるまい、復讐は終わったのだから・・・」
結局誰一人救えなかった009の面々であった。