第49話『宇宙通信SOS!!』

Joetip2006-04-05

日本列島付近を飛行中だった輸送機が台風にまきこまれ海上に不時着、クルーの5人は救命ボートで脱出する。ここで荒れる海のスクリーンプロセスが背景に描きこまれ、なかなか迫力がある。そういえばこのシリーズで海が出てくることはほとんどなかったな。
濃霧が晴れてくると下には海はなく、そこが巨大な建造物の中だということに気がつく。無人だった。ここはどこなのか、何者がこれを作ったのか、何のためのものなのか・・・まったく分からない。次々に遭遇する意味不明な事態、自動機械、徘徊する不定形生物。彼らはここから脱出できるのか・・・?
『アウター・リミッツ』最終回はかなり地味な内容で、複雑なストーリーでもない。しかしこの話には『アウター・リミッツ』のテーマが凝縮されているのではないか。
この話は、始終彼らの視点のみで語られている。彼らには知らされていないが、我々の方にだけ分かる材料というものはない。画面に出てきた現象、自動的に作動している機械の目的を彼らと一緒に推理する。
彼らは色々な手がかりからこれは宇宙人が地球を調査に来た無人探査機ではないかと推推測し、そこにいない宇宙人とコンタクトをとろうと試みる。しかしその推測が真実とは限らない。物事は人の言説を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えなければならない。
私が思うに、『アウター・リミッツ』には共通するテーマがあったと思う。それは世の中、物事は相対的なものであり、絶対的な価値観はないということである。宇宙人から見て、地球はどう見えているのか、未来から現代はどう見えるのか・・・そういう異界からの視点を設けることによって、我々は普段の何気ない行為や、普通に暮らしていた社会が実は異常なもの、反対に素晴らしいものだった、という発見があるだろう。こういう価値観の逆転や、視点の過激な入れ替え当時のSFの大きな特長であった。
また、「赤狩り」でハリウッドを追われた人たちがTVの方へ活動を移していったことが、「辺境からの視点」をこのシリーズに与えた。
もう一つは、科学的なものの考えを徹底したことである。このシリーズの愚直なまでの科学に対する信頼がある。世界の謎や困難は科学の力で解決できる、科学が発展すれば災害、経済不安、差別など人類を覆う不幸を克服できる、と堅く信じているのである。科学の暴走で破局がくるという話ばかりじゃないかと思われるかもしれないが、根本には大きな試練に立ち向かう科学者の勇姿が描かれる。科学的な思考を放棄した昨今のオカルト志向ではない。
思うにこれが当時の(今から見れば)古きよきアメリカの民主主義精神だったのだろう。最近の全世界的に蔓延する政治的、民族的不寛容を見るにつけ、思えば遠くに来てしまったなあという気がします(まああの時代も現代に負けず劣らず酷い事件がたくさんあったわけですが)。