『アウターリミッツ 完全版 1st SEASON DVD-BOX 1』

「病んだ精神」4連発

第7話『地球は狙われている』
物語の大半が証人の質疑に費やされており、地味というか、会話は結構難解である。これを見るとこのシリーズは子供を対象にしていないと分かる。
国防省の委託を受けている科学研究所で、殺人事件が起こる。事態を重く見た政府は上院議員オーヴィルを派遣し、実態調査を行う。この研究所の科学者たちは精神を病んでいた。絶えず見られいるような気がする、個人的な秘密がどんどん漏れている・・・と証言する。以前から不安を訴えていた科学者は軟禁されていた。そして議員はある機械の存在を突き止める。国防省の依頼で開発したO.B.I.Tという機械だった・・・。
面白い眼鏡をかけた謎の男、ロマックス博士を演じたジェフ・コーリーは50年代にレッド・パージに引っかかり、不遇をかこっていた人物だそうで、確かにALL CINEMA ONLINEで検索すると12年のブランクがある。後に演劇の教師としてジャック・ニコルソンレナード・ニモイサリー・ケラーマンバーブラ・ストライサンドロビン・ウィリアムズなどの指導をしたそうである。この話も赤狩りの時代を踏まえているのは明らかだろう。
コンラッド・ホールによる映像も凝りまくりで、人物にも背景にもほとんどまともな照明が当たってない。

第8話『脳交換』
北極圏の氷に閉ざされた軍事基地。同僚を事故で死なせた罪悪感から、精神に異常をきたした少佐、ヘッドギアみたいな帽子をかぶると、脳波を電波にしてお互いの考えていることがわかる装置を開発した科学者のストーリーが交錯してとんでもない事態になるという話。
簡単言にいうと大林宣彦監督の『転校生』サスペンス版。いまひとつ話がこなれていない印象。少佐が見る幻覚も効果的とは思えない。科学者を愛する助手にロバート・アルトマン組のサリー・ケラーマン

第9話『宇宙ビールスの侵入』
石がしゃべるという結構間抜けな設定で前半は油断するが、後半その石の声が聞こえる唯一の男(戦争中の負傷で頭蓋に金属板を入れているのだが、それがラジオみたいな作用をするらしい)が自分は頭がおかしくなったのではないか?と悩みメキシコに逃避するあたりからゾンビ映画っぽくなって異様な雰囲気となる。ところで歴代のハリウッド映画のメキシコ観を見てみると興味深いかもしれない。
本土の人間が沖縄に対して手前勝手な楽園をイメージするのと似ているような気がする。悪くは描いていないが、文明国とは異質な呪術的な回路で動いている、そんなイメージである。

第10話『悪夢』
人間性を押しつぶしてしまう軍隊組織に対する怒り、ストーリーの完成度から見てもレベルの高い傑作。地球はエボン星と戦争をしていた。6人の兵士がエボン星人の捕虜となる。エボン星人は一人一人呼び出して地球軍の機密を話せとせまる。エボン星人は幻覚を利用し彼らを心理的に追い詰める。それでも忠誠心から口を割らない彼らだが、いつの間にか極秘情報を敵に知られてしまう。誰かが裏切ったのか・・・疑心暗鬼から仲間割れが始まり、精神を病んでいく。そして意外な結末が・・・。『12人の怒れる男』のように、更地のスタジオに書き割りの岩しかないという抽象的なセットで、男たちの深層心理がむき出しになっていくさまは迫力があり、俳優に相当の演技力を要求する。特に精神的に虚弱でやたら吼えたがるマーティン・シーンと、無口で他を見下しているような態度のジェームス繁田(『ダイ・ハード』の社長の人)の対比が面白い。