『アウターリミッツ 完全版 1st SEASON DVD-BOX 1』

子供時代、すごい衝撃を受けたTVシリーズ(当時は『ウルトラゾーン』と呼んでいた)、長らくビデオ化されていなかったが、今観てどうなんだろ?ということで買ってみた。



第一話『宇宙人現る』
「これはTVの故障ではありません・・・」有名な若山玄蔵のナレーションで始まるこのシリーズ、第一話はこの出だしからのつながりでTVの画像から始まる。
最初なのでさすがに気合が入っている。宇宙人の造形が異質で、やはりアメリカと日本では宇宙人に対する感覚が違う、と思った。日本だと昆虫とか爬虫類とか、もっとなじみのあるモデルを使うと思うが・・・、何を考えてるか分からない丸い目玉と、鼻も口もない造形は感情の移入を拒否している。
この異様な宇宙人とTV交信して、いろんなやりとりからだんだん分かり合えていく過程が丁寧に描かれている。その結果、宇宙人が酸素循環ではなく窒素循環、エネルギー源は電磁波ろいうことが分かる。とてもお互いの環境では生存できそうもないが・・・
出演は「アルジャーノンに花束を」を映画化した邦題は「まごころを君に」で後にビデオではやっぱり「アルジャーノンに花束を」に改題した原題「チャーリー」でアカデミー賞を受賞したクリフ・ロバートソン
前半は地味だが後半は大掛かりな特撮。


第二話『もう一人の自分』
いきなり地味な話・・・。スパイ大作戦である。007の『ゴールドフィンガー』、日本の『キングコングの逆襲』などを見ても分かるが、60年代東洋の某国は明快に敵だった。雰囲気はちょっと『影なき狙撃者』を彷彿させる。TVにもかかわらず、白黒映像には深みがあり、影の強調が観る者を不安にさせる。
カメラは『明日に向かって撃て!』『アメリカン・ビューティー』『ロード・トゥ・パーティション』で3度アカデミー賞をとったコンラッド・ホール


第三話『ゆがめられた世界統一』
シリーズ中、一二を争う異常な話。どういう権限があるのか分からないが、科学者たちが集まって、戦争をなくすためには人類共通の敵を作らねばならない、ということで宇宙人が地球に襲来する、という事件をデッチ上げようとする。しかしただデマを流すだけでは不足なので人間を本物の宇宙人に改造することにする。正直言ってこんな計画に志願する人はいないと思うんだが。ほとんどの時間が人体改造の様子に費やされ、最後の最後に計画が実行に移されるのだが・・・この宇宙人が人間に似ても似つかないというのがすごい。
監督はバイロン・ハスキン


第4話『人間電池』
この邦題はちょっと笑っちゃうが、脳改造を自ら行い、超能力を持った男の悲劇を描く。この大学教授が野心満々ではなく、普段は妻に頭の上がらないオドオドした小心な男なのが面白い。演じるドナルド・プレザンスがこれ以上ないはまり役。
この小心な男が、何かむかつくことがあると、どこからともなく黒雲(えんどこいちのマンガ『ついでにトンチンカン』に出てくるドンヨリ雲みたいなやつ)がムクムクと湧き上がるのであった。


第5話『狂った進化』
未来人=頭がでかいというイメージを普遍的にした有名な作品。デビッド・マッカラムが出演。なんか雰囲気が変だと思ったら、一応イギリスが舞台。それで無知で貧乏=炭鉱夫ということらしい。今観るとやや差別的。未来人がピアノを弾くシーンがいい。見たところマッカラムが本当に弾いている。恋人役のジル・ハワーズも良い。


第6話『生まれてこなかった男』
『12モンキーズ』みたいな話。科学的設定はかなりいい加減だが、寓話として割り切ってみるとかなりの傑作。
時間の壁を破って200年後の地球に来てしまった宇宙飛行士は、荒廃した地球に愕然とする。ただ一人生き残った地球人アンドロ(マーティン・ランドー)は語る。バート・キャボットJr.と言う科学者が宇宙から持ち込んだ細菌が増殖し、人類は滅亡した。過去へ戻ってキャボットを殺さなくてはならない、と。アンドロはこの細菌のために容姿がしゃれにならないくらい醜く変貌していた、頭脳は明晰だった。「重要だったのは予防医学だったが、人類は月へ行くことや、原水爆の製造に忙し過ぎたのだ。」
そして過去に戻ったアンドロは、キャボットの母にあたる若い女性ノエルに遭遇するが・・・。
アンドロには催眠能力があり(なぜ?)、人々にはハンサムな男に見えていた(ランドーが素顔で演じるわけね)。この時だけ画面がソフトフォーカスなのがうまい演出。自分の醜い容貌を恥じ、ノエルを愛し始めるアンドロの複雑な内面をランドーは演じきっている。さすがである。