『一年の九日」(1961)

フルシチョフスターリン批判の受けて、ほんのちょっとの間だけ、ソ連映画に自由な気風がでてきました。そんな中でタルコフスキーも出てきたわけですが、これはタルコフスキーの師匠にあたるミハイル・ロンムの作品です。シネマスケープでも今のところ、4人しか投稿していませんが、はっきり言って傑作。
いろいろ映画を観てきましたが、こういう設定の映画というのは他に見当たりません。
原子物理学者たちの生活、苦悩、友情、恋愛が描かれます。『突然炎のごとく』みたいな三角関係がある一方で、天井から床までメカに囲まれた研究所が出てきます。西側映画でもビビって撮れない被爆の問題も提示してます。
ロンム(当時62歳)の演出はまるで青年のように才気走りまくりで、凝ったカメラワーク、編集、洒落た美術が楽しめる。シリアスな中にもユーモアもちりばめられており、当時のソ連のインテリア、建築様式も観察できます。考えてみれば、ソ連映画といえば、タルコフスキー、戦争映画、歴史映画しか思いつかないので、当時の世相を描いたこの映画はかなり貴重といえるでしょう。

こんな映画が大抵のビデオ店にあるのというのが驚きです。