第一話「スパイダーマン誕生」 電気人間エレクトロ登場

木造二階建て家屋で優しいおばさんと二人暮らしの高校生小森ユウ。ガリ勉でスポーツはからっきしの暗い少年である。クラスでは孤立しているようである。「いまに見てろ・・・おれは意地でも勉強して、おれをばかにしたやつらを見返してやるんだ!」彼は学校の実験室で放射線の研究(なぜ高校にこんな施設が?)をしていて、その放射能をかぶったクモにかまれ、いきなり超能力を授かる。こうして自分の能力を自覚したユウは、独自に研究を重ね、スパイダーマンとなる。ちなみにクモの糸はユウが開発したスパイダー液。四畳半の自分の部屋の天井に貼りついて悦に入っているユウ。この辺まではだいたい映画の通り。
根暗な少年のはずのユウだが、なんと文通(注:かつてパソコンの無かった時代、文通とか交換日記といった手段で遠くの友人や異性とコミュニケーションを図っていた。相手のことを『ペンフレンド』と称することもあったと言う)をしていた女の子がいた。そのルミちゃんが北海道から上京するという。
その待ち合わせ場所へ行く途中で、ユウはとんでもない事件に遭遇する。エレクトロと称する怪人が銀行を襲い、手から電光を発して金庫を破壊し、金を奪っていった。ユウは自分と同様な超能力者の存在に驚く。
ルミちゃんの話は悲惨なものだった。ルミちゃんは父がなく、母も心臓病で弱っており、東京で働いているはずの兄は職場を辞め、行方不明になっていた。そして母の手術費用(百万円!)もないほどお金に困っていた。
一方、エレクトロは銀行強盗を繰り返し、警察もお手上げ状態だった。情報新聞社では強欲そうな社長が、受け狙いでエレクトロを捕らえた者に一千万円の賞金を出すと宣言する。TVを見たユウは決心した。「ルミちゃん、お母さんの入院費、おれ 何とかするよ!」
お母さんの入院費を賭けて、スパイダーマン対エレクトロの対決が始まった!多くの日本人はまだ貧乏なんだけど、しかし金は次々と必要となる、当時の高度系税成長期の生活の実情が反映されている。
だいたいヒーローものは最初は子供向けに表現を手加減しているものだが、これは最初から飛ばしてます。後半は感電して黒こげになる人間が続出、その描写がエグい。高度経済成長期のすさんだ都会の風景。そして全くカタルシスのないイヤーな結末。今後ユウはスパイダー能力のおかげで地獄のような人生を歩むことになります。「ぼくの超能力は、いったいぼくにとって素晴らしいものなのか・・・!?」